■【主張】自民党改憲草案 識者と共に国家像つめよ(産経)
 自民党の新憲法起草委員会は、有識者らを交えた諮問会議を発足させ、十八日に初会合を開く。
 諮問会議は、起草委小委員会が四月にまとめた「小委要綱」に検討を加え、「起草委要綱」を作成する。この要綱は、自民党が十一月の結党五十周年に発表する改憲草案の骨格となる。
 「保守」の名に恥じぬ独自案をまとめ、国民に示すことが、自主憲法制定を党是としてきた自民党の責務だ。  諮問会議の委員には、首相や衆参両院議長経験者、起草委員、経済三団体の代表に加え、作家の三浦朱門上坂冬子の両氏と岡崎久彦元駐タイ大使の計十七人が選ばれた。
 「小委要綱」は評価できるが、まだ不十分だ。九条改正は、「自衛のために自衛軍を保持する」とし、集団的自衛権行使容認も読めるようにした。前文には「歴史、伝統、国の生成発展」や愛国心を盛り込むとしている。
 一方、天皇については「現行の象徴天皇とする」としながらも「元首と明記すべきだとの意見があった」にとどめた。「元首か象徴か」の論争をまた、提起したいというのだろうか。
 世界の多くの国々が天皇を事実上の「元首」として扱い、対応している。「対外的な代表性」の有無が国家元首の判断基準とされているが、既にこれは決着している。天皇の法的地位をあいまいにしたまま、政治的に利用する余地を残すのは疑問である。
 国会に関しても「二院制とする」としたうえで、一院制に言及した。強大な第二院のあり方を問うことなく、参院の現状維持の主張がそのまま盛り込まれている。これでは、国のあり方や政治の現状をどうとらえるかの論議が十分だったとはとても言えない。
 小委が要綱をまとめる際には、公明、民主両党との妥協を重視するあまり、自民党らしさを抑えようという意見が少なくなかったという。だが、自民党として、あるべき改憲案をまとめて、初めて他党との調整に入れるのではないか。はじめから妥協ありきでは国民の期待には応えられない。
 何のために憲法を改正するのか、国民の平和と安全を現行憲法で守れるのか。憲法が体現する国家像をもう一度、白紙から識者とともに議論し、よりよき改憲案に近づけてほしい。

 自民憲法「諮問会議」 武力行使、見解どこまで きょう初会合、要綱に反映
 自民党憲法起草委員会(委員長・森喜朗元首相)は十八日、首相・衆参両院議長経験者や文化人、財界代表で構成する「諮問会議」の初会合を開き、約一カ月半ぶりに憲法改正論議を再開させる。安全保障や天皇など主な論点について諮問会議で意見を聴いたうえで、早ければ六月中に新憲法要綱を策定する。その後は十一月の結党五十年大会で新憲法草案を発表する段取りだ。
 ◆武力行使
 起草委の「安保・非常事態」小委員会要綱は、自衛と国際の平和と安定のために「自衛軍」の保持を明記した。
 集団的自衛権の行使範囲や自衛軍による海外活動の中身は安保基本法や国際協力基本法で規定する方針だ。国連安保理常任理事国入りと絡んで、日本の憲法改正は世界の強い関心を集めている。
 「イラク自衛隊を派遣したのは大きな進歩だが、自衛隊を他国の軍隊が守るのは不思議だ」
 十六、十七の両日、国会内で行われた日本・EU(欧州連合)議員会議で、英国のグリン・フォード氏から厳しい発言が飛び出した。
 フォード氏は「英軍はイラクで四カ月間に二百五十回の攻撃で九万発撃たれた。日本は(宿営地に)ロケット弾が撃ち込まれただけで興奮するようだが、イラクはそんな状況ではない」とし、「他国の軍隊が自衛隊を守る状況は克服されなければならない。日本が憲法を改正して通常の国になることを歓迎したい」と強調した。
 現行憲法下では禁じられている集団的自衛権の行使や海外での武力行使について、安保問題に詳しい岡崎久彦元駐タイ大使らが諮問会議で明快な見解を示すか注目される。
 ◆国柄
 歴史と伝統を踏まえた国柄をどう表すかも重要な論点だ。中曽根康弘元首相が委員長を務めた「前文」小委は「われわれ(国民)は、国民統合の象徴たる天皇とともに歴史を刻んできた」などの内容を盛り込むことを決めた。象徴天皇維持は即決したが、天皇を元首と記すか否かの結論は避けた。
 自衛隊と共通するのは、いずれも海外では「元首」「軍隊」と扱われているのに、国内では明言を避けている点だ。
 憲法改正を目指す有識者でつくる「民間憲法臨調」代表世話人三浦朱門氏、作家の上坂冬子氏といった保守派を代表する論客の参加で、伝統・歴史・文化を重視する党内の「理念派」が勢いを増しそうだ。
 ◆財界後押し
 諮問会議には当初予定していた憲法学者と連合など労働団体の代表は選ばれなかった。憲法学者は政党色が強まるのを敬遠し、労働団体は意見集約ができていないことを理由に断ってきたためだ。一方、経済三団体は各代表を送り込み、自民党の改正論議を後押しする姿勢をみせている。
     ◇
 ■憲法改正をめぐる動きと見通し
 〈平成〉
 17年4月4日 自民党憲法起草委員会の各小委員会要綱発表。「自衛軍の保持」明記
     15日 衆院憲法調査会が9条を含め憲法改正の方向性を打ち出した最終報告書
     20日 参院憲法調査会が新しい人権の明記を盛り込んだ報告書
   5月18日 自民党憲法諮問会議が初会合
   6−8月  自民党が新憲法要綱を策定
         衆参両院憲法調査会国民投票法案を審議できる「憲法調査委員会」に衣替え
  11月15日 自民党が結党50年大会で新憲法草案発表
 18年     民主党が「創憲」案、公明党が「加憲」案発表
 19年     自公民3党が憲法改正案について政党間協議へ
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 ■諮問会議メンバー
 【首相経験者】
 中曽根康弘海部俊樹宮沢喜一橋本龍太郎各氏
 【衆参両院議長経験者】
 綿貫民輔衆院議長、倉田寛之参院議長
 【民間】
 三木繁光・日本経団連副会長、北城恪太郎・経済同友会代表幹事、高梨昌芳・日本商工会議所副会頭、岡崎久彦元駐タイ大使、作家の三浦朱門上坂冬子両氏
 【新憲法起草委員会】
 森喜朗委員長、与謝野馨事務総長、中曽根弘文副事務総長、保岡興治事務局長、舛添要一事務局次長(産経新聞) - 5月18日2時49分更新

 自民、憲法諮問会議委員に三浦朱門氏ら内定
 自民党憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)は11日、改憲草案について意見を聴くため、首相や衆参両院議長の経験者、財界首脳、文化人らで構成する諮問会議の委員17人を内定した。文化人枠には作家の三浦朱門(元文化庁長官)、上坂冬子両氏が就任する。18日に党本部で初会合を開き、4月にまとめた起草委の「小委員会要綱」について意見を求める方針。
 委員に内定したのは、森氏ら起草委幹部5氏のほか中曽根康弘宮沢喜一海部俊樹橋本龍太郎各元首相、綿貫民輔衆院議長、倉田寛之参院議長、日本経団連の三木繁光副会長、経済同友会の北城恪太郎代表幹事、日本商工会議所の高梨昌芳副会頭、元駐タイ大使の岡崎久彦氏ら。
 当初は学界や連合など労働界からも就任を求める考えだったが、「色が付くから、などの理由で断られた」(党幹部)という。(共同05/11 20:46)

 首相、靖国神社参拝「問題なし」と強調 衆院予算委(朝日2005年05月16日12時17分)
 衆院予算委員会で答弁する小泉首相(左)=16日午前、国会内で
 小泉首相は16日の衆院予算委員会で、靖国神社参拝について「どのような追悼の仕方がいいかは他の国が干渉すべきでない。(元首相の)東条英機氏のA級戦犯の話が出るが、『罪を憎んで人を憎まず』は中国の孔子の言葉だ。何ら問題があるとは思っていない」との認識を示した。今年の参拝時期については、「いつ行くか、適切に判断する」と答えた。仙谷由人氏(民主)の質問に答えた。
 首相は「日本は戦後60年間、戦争に巻き込まれず、戦争もしていない。戦没者全般に敬意と感謝の誠をささげるのがけしからんというのは理由が分からない。軍国主義の美化ととらえるのは心外だ」と述べ、参拝に問題はないと強調した。
 JR宝塚線福知山線)の脱線事故については「民間の会社も安全第一。そのうえで効率を考える。競争を通じていかに国民によりよいサービスを提供するか、努力している会社はたくさんある」と述べ、効率重視の民営化が事故の一因との見方に反論した。菅直人氏(民主)に答えた。