つくる会」教科書、来春用採択は1%前後の見通し(朝日新聞2005年08月18日)
 来年春から中学校で使われる教科書の採択で、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した扶桑社版の歴史、公民両教科書の採択率がそれぞれ1%前後になる見通しであることが朝日新聞社の調査でわかった。「つくる会」は「採択率10%」の目標を掲げていた。
 朝日新聞は15日現在で市区町村教委や私立中などに採択結果を取材、今月発表された学校基本調査(速報値)の児童・生徒数などをもとに計算し、おおよその採択率をまとめた。
 調査によると、全国で来年度使われる歴史、公民の教科書数はそれぞれ約120万冊で、このうち7割程度の約80万冊分は市区町村教委での「採択」または採択地区協議会での「選定」を終えていた。
 採択結果を公表していたのは、全体の4割程度の約40万冊分。この中で扶桑社版の採択率は歴史が約0.9%、公民は約0.6%だった。
 ただ、現時点では、全体の5割以上の冊数分について教育委員会が採択結果を公表していないか、採択を終えていない。これらの教委や、教科書会社などに取材した結果、採択率は最終的に1%前後となる見通しとわかった。各教委は8月末に教科書採択を終える。これを受けて文部科学省は今秋、教科書会社別の採択率を発表する予定。
 17日現在で、扶桑社版の採択が明らかになっているのは、歴史・公民教科書の双方は、公立が栃木県大田原市と、東京都立のろう・養護学校など。東京都杉並区、東京都立の中高一貫校などは歴史のみを採択した。
 扶桑社版は「他社の教科書は自虐的だ」と批判する「つくる会」のメンバーらが執筆し、「日本人としての自信と責任を持てる教科書を」と主張している。来春から使用される歴史、公民の教科書について検定合格したのはそれぞれ8社。
 文科省によると、扶桑社版で05年度使用分の採択率は歴史0.108%、公民0.074%だった。
 調査結果について扶桑社は「前回と比べて着実に採択部数は増えている。今後も増えることを願っており、最終的な結果を待ちたい」とコメントした。

  歴史教科書:「つくる会」採択率は0.5%以下
 来年4月から中学校で使用する教科書をめぐり、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した扶桑社の歴史教科書の採択率が0.5%以下にとどまる見通しであることが分かった。公民の教科書についても0.2%前後で、初めて参入した前回(01年)同様、会の目標の10%を大幅に割り込むのは確実な情勢となった。同社は次回の教科書発行業務について「未定」としており、つくる会側が戦略の再検討を迫られる可能性が出てきた。
 教科書採択は、全国の583の採択地区で事実上7月からスタート、今月31日で締め切られる。扶桑社の独自集計によれば、採択された歴史教科書は、市区町村立で初採択された栃木県大田原市や東京都立の中高一貫校4校、杉並区などで計5000部。前回の約600部から8.3倍に増えたものの、現在判明している採択率は0.4%。公民も前回の約700部から3.5倍の2500部となったが、0.2%前後だ。
 採択率が確定するのは9月中旬以降になるが、前回(歴史教科書で0.038%)に続き、採算ラインの10%を大幅に下回るのは確実だ。今回の検定・採択にあたり、つくる会と扶桑社は内容のソフト化に加え、前回から唯一コラムで取り上げていた「北朝鮮による日本人拉致事件」について、北朝鮮側が認めたこと(02年)などを追い風に、地方議会などに採択を働きかけてきた。
 しかし、検定期間中に申請本を3回流出させていた事実が発覚したり、前回同様、中国と韓国両国が反発を強めたことなどが影響し、期待した成果につながらなかったとみられる。扶桑社は「前回より着実に増えた。ただ、期待していたが採択されなかった地域もあり残念だ。執ような妨害で公正な採択活動が阻害された」としている。【千代崎聖史、井上英介】(毎日新聞 2005年8月31日 3時00分)

 扶桑社教科書 採択は0.4%
 来年4月から中学校で使われる教科書の採択は、全国583の地域ごとに行われ、31日までにすべて終わりました。NHKが、47都道府県の教育委員会に取材した結果、韓国と中国から「過去の侵略を美化している」として批判を受けている、「扶桑社」の歴史教科書を使う中学校は、区市町村立では、東京・杉並区と栃木県大田原市の2つでした。これに東京都と愛媛県、それに滋賀県立の中高一貫校や、全国の10の私立中学校などを加えて、「扶桑社」の教科書を使う生徒の割合を示す採択率は0.4%程度にとどまる見通しです。これについて、「扶桑社」は「前回より採択部数は着実に増えたが、期待していた地区で採択されなかったところもあり残念だ。今回の結果を分析し、今後に生かしていきたい」と話しています。一方、「扶桑社」の歴史教科書の採択に反対してきた、「こどもと教科書全国ネット21」は「採択がごくわずかにとどまったのは、戦争に反対し平和を求める人たちの草の根運動の勝利だと考える。杉並区などには採択の撤回を求め続けたい」と話しています。(NHK09/01 18:50)

 歴史教科書:「つくる会」が会見「4年後に3たび挑戦」
 扶桑社が発行する中学校社会科教科書を執筆した「新しい歴史教科書をつくる会」(会長、八木秀次・高崎経済大助教授)が2日会見した。4年ごとに見直される教科書の採択率で、今回0.5%以下の見通しとなったことについて、八木会長らは「残念だが、教育委員会の最後の採決で『2対3』で採択されなかったケースが多数あり、選挙の惜敗率でいえば極めて高い。4年後に3たび挑戦する」と述べた。
 八木会長らは、1日時点での数字として、歴史が77校で5080冊、採択率が約0.43%、公民が42校で2560冊、約0.21%だったことを明らかにし、「目標の10%には届かなかったが、飛躍のための橋頭堡(きょうとうほ)だ」などと語った。(毎日新聞2005年9月2日20時34分)