町村外相、「愛国無罪」で厳しく追及
 町村信孝外相は17日夜、日中外相会談で反日デモでの破壊行為について「『愛国無罪』と言えば何をやってもいいのか」と李肇星外相に厳しく迫ったことを記者団に明らかにした。
 会談で李氏が「(反日デモの)根本原因は歴史問題にある」と述べたのに対し、町村氏が反論した。
 町村氏は記者団に、反日デモをめぐる李氏とのやりとりについて「すれ違いだった。日本国民が衝撃を受けていることを中国のリーダーは理解していない。残念だ」と述べ、中国側の対応に不快感を示した。
 また、デモ隊の襲撃を受けた日本大使館を視察した感想について「大きな玄関の大きなガラス全面にひびが入っていた。相当な衝撃で壊されたと想像できる」と述べた上で「そうした破壊活動を阻止しなかった警備の不十分さを(会談で)指摘した」と強調した。(共同)
[2005/4/18/00:30]

 社説1 事態の沈静化に日中の連携強化を(4/18日経)
 中国各地で反日デモが相次ぐ中で町村信孝外相が17日訪中、李肇星外相と事態の打開策や今後の日中関係を巡り会談した。町村外相が一連のデモにおける日本政府・企業施設などへの破壊行為に強く抗議したのに対し、李外相は「日本政府が中国人民の感情を傷つけていることが原因」と反論、謝罪を拒否した。
 反日デモがここまで拡大した原因は、中国政府が投石や殴打などの破壊・暴力行為の責任を回避していることにある。中国政府が自国民の不法行為の非を認め、再発防止に全力をあげるよう重ねて求めたい。
 一方、双方が首脳会談の実現や人的交流の拡大をめざした「共同作業計画」の策定、歴史の共同研究開始で原則合意した点は評価できる。日中関係が最悪状態に陥った今こそ両国は対話を深め、事態の沈静化に向けて連携を強化すべきだからだ。
 デモの背景には小泉純一郎首相の4年連続の靖国神社参拝などに対する中国国民のうっ積した不満がある。小泉首相は過去の戦争を反省し、平和、友好関係を希求する日本の対中政策に変わりがないことを改めて説明する必要もありそうだ。
 16日の上海における反日デモの参加者は2万人と最大規模に膨れあがり、日本総領事館の窓ガラスや日本料理店の看板などが投石や殴打によって破壊された。国際経済都市、上海のイメージ低下ははかりしれない。一連のデモが過激化した原因は、中国政府が責任を日本に転嫁する発言を繰り返しているためだ。
 愛国主義の名のもとに日本の侵略戦争を糾弾し続けてきた共産党政権には、若者の反日デモを否定できないのかもしれない。中国は日本の一部の歴史教科書を強く非難しているが、日中戦争に偏った中国の歴史教育にも大いに問題がある。首脳会談や歴史の共同研究を通じてこの深い溝を少しでも縮小できれば、両国関係の安定にプラスとなろう。
 われわれは小泉首相A級戦犯合祀(ごうし)のもとでの靖国神社に参拝することに反対してきた。首相の参拝は日本が「戦争で中国国民に重大な損害を与えたことへの責任を痛感し、深く反省する」とした国交正常化時の共同声明の精神に反する、という中国の主張にも耳を傾けるべきだ、と考えるからである。
 中国の民衆がこれほどの不法行為を繰り返しているにもかかわらず、諸外国メディアの多くの論調が日中双方の責任を問うていることは象徴的である。小泉首相にはいま一度、自らのアジア政策を包括的に説明してもらいたい。