扶桑社版不採択へ圧力 韓国、左派勢力を通じ介入か
 【ソウル=黒田勝弘】日本の中学教科書検定結果について韓国政府(外交通商省)の批判声明は「日本政府なりの努力の跡がある」「少なくない教科書が客観的記述を目指している」などと珍しく評価している。最初から「歪曲(わいきょく)」と決め付けているマスコミは依然として扇動的な反日報道を展開しているが、政府サイドとくに外交当局は今回、比較的穏やかな反応になっている。
 国定教科書で政府(国史編纂(へんさん)委員会)が作る一種類しかない韓国と違って、日本では記述内容に政府が介入するのは限界があることが、日本側の“抵抗”でそれなりに理解されたからだ。また前回、採択率が0・1%にも満たなかった扶桑社版「新しい歴史教科書」を理由に日本と激しく争うことに“外交的消耗感”も感じている。
 したがって韓国政府としては検定結果より採択に関心を寄せており、今後は扶桑社版の不採択に向けた“対日圧力”に全力を挙げる方針だ。
 既に韓国政府は最近、国家安全保障会議声明として発表した「対日外交方針」で「日本の良心勢力と連帯」したり「市民社会間のネットワーク構築」を強調している。韓国としては今後、日本近代史の否定的な面を強調する日教組系をはじめ日本の左派や進歩派組織、知識人などを「良心勢力」とし、それらを利用することで日本国内に韓国支持派を増やそうという作戦だ。
 四年前と同じく今回もそうした日本の反日的な「良心勢力」は扶桑社版非難のため、早くから韓国側に記述内容を“通報”し反日をあおってきた。韓国では大統領直属機関として官民合同の「正しい歴史企画団」も近く旗揚げする。韓国による日本の教科書問題への介入は日本側の内部対立を利用するかたちでさらに活発化する見通しだ。
 その意味で歴史教科書問題は結局、「日韓問題というより日日問題」ということになり、日本国民としてどういう歴史認識を持つのかその姿勢が試されることになる。
 反日感情を扇動し対日強硬論を主導している韓国マスコミは今回、歴史記述で“韓国寄り”が見られるため非難の力点を領土問題に移し、竹島に対する領有権の主張が教科書に盛り込まれていることを「過去の侵略正当化」「改悪」「さらなる歪曲」などと非難している。
 「国民へのメッセージ」など相次ぐ激しい日本非難で反日外交を展開している盧武鉉政権は、領土問題や教科書問題などを理由に「もう放置できない」「断固対処」「根こそぎ解決を」「日本との外交戦も辞さず」と強硬論を打ち出しているが、これは国内世論を意識した「言葉の戦争」という感じが強い。
 当面は対日強硬姿勢を取りながら、上半期に計画されている盧大統領と小泉純一郎首相との首脳会談に向け「新たな歴史共同研究案」など何らかの解決策を探す構えだ。韓国としてはこれから振り上げたコブシの下ろし方に悩むことになろう。(産経)

 ニュース速報:4月5日(火)
【社会】「ジェンダー」が消えた−平等教育への批判影響か
 社会的・文化的につくられた性差を表す「ジェンダー」という言葉が、中学教科書から消える。教科書会社関係者や識者は「男女平等教育が行きすぎている」との批判が広がっているためとみており、ジェンダーという概念が使われなくなることを懸念している。
 社会的な性差を見直す意味の「ジェンダーフリー」という言葉もなくなった。A社の公民では「ジェンダー・フリーの社会へ」という題の記述に「男女共同参画社会とは異なる考え方が混同されている」と意見が付いた。出版社が「男女共同参画社会の実現をめざして」と差し替え、現行教科書で使っている「ジェンダー」は消えた。
 B社も保健体育で「男女のちがいについて考えてみよう」という項目全体に意見が付いたのをきっかけに、説明の中の「ジェンダー」という言葉を落とした。C社の家庭も「ジェンダーって?」の題が「みんなでつくる男女共同参画社会」に。
 文部科学省は「ジェンダーという言葉が悪いという意見ではない」と説明するが、記述を変えた執筆者の一人は「男女平等教育に行きすぎがあるとする勢力がジェンダーフリーという言葉をやり玉にあげた影響が大きいのではないか」とみる。
 瀬地山角東大助教授(ジェンダー論)も「『ジェンダー恐怖症』ともいえる過剰な反応が各地で起きている。文科省もこの流れに影響されたのだろう」と懸念している。(サンスポ)