ヒーローものゲーム、子供の攻撃性増加の可能性
 悪者が暴れまわるテレビゲームより、かっこいいヒーローが敵を倒すゲームの方が、むしろ子どもの攻撃性を高める可能性があることが、お茶の水女子大の坂元章教授らのグループ研究で明らかになった。

 坂元教授らは2001年11月から12月にかけて、神奈川県や新潟県などの小学5年生を対象に、よく遊ぶテレビゲームと攻撃性に関するアンケートを実施、1年後に同じ児童に追跡調査を行い、周囲の人への敵対心を表す「敵意」など、攻撃性に関する五つの指標について、その変化を調べた。
 6校の児童592人についての調査結果を分析すると、知的だったり、見た目がかっこよかったり、魅力的な特徴を持つ主人公が登場し、攻撃するゲームでよく遊んでいた児童は、1年後に「敵意」が上昇していた。「ひどいことをした悪者に報復する」という、暴力を正当化するゲームでよく遊んでいた児童も同様に「敵意」が高くなっていた。
 これに対して、攻撃回数が多い、たくさんの人を攻撃するなど、暴力描写の程度が高いゲームで遊んでいる児童の場合は、研究チームの予想とは反対に、むしろ攻撃性が低下していた。
 この結果を坂元教授は「かっこいい正義の味方だと、プレーヤーが自己同一視しやすいため」と分析している。
 一方、同時に行った保護者に対する意識調査で、ゲームの内容ごとに、子どもに「遊ばせてもいい」から「絶対に遊ばせたくない」まで5段階で評価してもらったところ、保護者は、登場人物の特徴などにはあまり注意を払っていないことが分かった。522人の回答を分析すると、多くの保護者が懸念を示したのは「戦いのシーンで血が流れる」(1位)や「攻撃にかかわった人数が多い」(2位)などの条件。ヒーローによる暴力や暴力の正当化はいずれも20位以下だった。
 ゲームソフトのメーカーなど、約170団体が加盟する業界団体「コンピュータエンターテインメント協会」(辻本憲三会長)では、「テレビゲームと子どもの攻撃性については、まだ研究データが少なく、因果関係がはっきりしていない」(渡辺和也専務理事)という。このため、現在は、NPO法人特定非営利活動法人)「コンピュータエンターテインメントレーティング機構」(武藤春光理事長)によるレーティングを柱とした自主規制に頼っているのが現状だ。
 研究チームの一人で、分析を行った慶応大学メディア・コミュニケーション研究所の渋谷明子研究員は「この調査で、保護者が気付いていない問題があることが分かった。やみくもにゲームを敵視するのではなく、安全に遊ぶにはどうすればよいのかを考える助けにしてほしい」と話している。
 レーティング ゲームソフトの内容によって、対象年齢などを設定する制度。民間から公募で集まった審査員が、暴力表現や性表現などについて審査し、年齢については、「全年齢」「12歳以上」「15歳以上」「18歳以上」の4種類に分類する。結果は「年齢区分マーク」でゲームソフトのパッケージに表示されるが、消費者が購入する際の目安であり、強制力はない。(2005年1月7日 読売新聞 無断転載禁止)

 学力二極化、63%が実感 現場教員アンケート
 子どもの学力低下が懸念される中、平均程度の学力の子が減り、上位層と下位層に二極化する傾向が進んでいると感じる小中学校の教員が63%に上ることが7日、札幌市で始まった日教組の教育研究全国集会参加者を対象にした共同通信社のアンケートで分かった。
 原因として、教員が多忙になって授業についていけない子を指導する余裕がなくなったことや、親の経済力の二極化を挙げた。塾通いを含めた学校外の教育に費用をかけられるかどうかで差がつき、学校だけではカバーできなくなっているとみられ、教員たちが苦慮している実態が浮かび上がった。
 調査は昨年12月、教研に参加する200人に質問票を郵送、111人が回答した。(共同通信) - 1月7日16時26分更新