朝日の社説から。

 12月27日付■警察の裏金――返すだけでは済まぬ
 ことし、三つの道県警が、捜査費用をごまかして巨額の裏金をつくっていたことを認めた。年の瀬に、警官の処分や公金の返還が続いている。
 裏金づくりの手口は様々だ。
 捜査に協力してくれた人に謝礼をわたす制度を悪用したのが北海道警だ。電話帳で見つけた名前で領収書をでっちあげ、金を払ったことにする。そんな方法で11億円をひねり出していた。
 存在しない飲食店の領収書を会計検査院に指摘され、その店が出したという求人広告を偽造して再び見破られたこともあった。1万人余りいる道警の4人に1人が、何らかの処分を受けた。
 福岡県警は捜査に使う予算の一部を会計課が天引きしていた。天引きされた捜査各課は、捜査協力者に謝礼を多めに払ったように帳簿を水増しして、つじつまをあわせていた。こうしてつくった裏金は1億7千万円にのぼる。
 静岡県警の得意技はカラ出張だった。1300万円の裏金をこしらえた。
 裏金づくりは、福岡県警と静岡県警では00年度まで、北海道警では03年度まで続いていた。いずれも最初は否定していたが、市民団体の追及や内部告発で逃げきれなくなった。
 警察庁は、ほかの都府県警ではこのような不正はないという。しかし、それで納得する人がどれだけいるだろうか。
 一つの数字がある。
 裏金の元手になった国の捜査費は、広域犯罪の捜査などのために警察庁が全国の警察に渡すものだ。00年度まで毎年、80億円前後が使われていた。ところが、01年度から急に減り、03年度には39億円に半減した。
 裏金の存在が追及され始め、まずいと思った全国の警察が裏金づくりから一斉に手を引き、捜査費が余ったのではないか。そんな疑いが消えないのだ。
 裏金は何に使われたのか。本部長や署長が捜査本部をねぎらう激励費などに充てた。私的な流用はない。それが警察の説明である。
 しかし、警察内部には「幹部の飲み会やゴルフに使われた」との声がある。
 国民が何よりも不思議に思うのは、不正にかかわった警官がなぜ刑事責任を問われないのか、ということだろう。
 3道県警とも刑事責任を問うべき事例は見つからなかったという。だが、「不正を認めて金を返した」で済むなら、警察は要らない。これがほかの役所や会社なら、警察は決して見逃さないだろう。
 裏金をつくって管理した幹部には、詐欺や横領の疑いが残る。ニセの領収書や水増し帳簿をつくった警官は文書偽造の罪にならないのか。
 自ら解明するのがむずかしいのなら、検察が捜査に乗り出すほかない。
 一方で、必要な経費は堂々と予算で要求すればよい。昼夜を問わぬ厳しい仕事であることはだれでも知っている。警官の勤務実態をよく調べ、働きに報いる時間外手当を十分払うことも大切だ。

 「国のため」「組織のため」「会社のため」と言って、不正や犯罪に走る人たち。そうして、結局は国を破滅へと導いていく。

監修料を組織ぐるみ管理 社保庁が関係者を処分へ
 厚生労働省社会保険庁の職員がビデオなどの監修料として業者から現金を受け取った問題で、社保庁経理課がこうした金をプールして一括管理し、各課に分配していたことが27日、同庁の内部調査で分かった。
社保庁は来年1月中旬までに、調査結果を発表し、関係者を処分する方針。
社保庁は10月に内部調査結果を公表した際「監修料は各課の庶務係長が管理し、懇親会などに使った」と説明。しかしその後の調査で、社保庁では各部署の庶務担当職員が業者から受け取った監修料は経理課に渡されて同課が組織的に管理、一部は各課に配らず、プールしていたことが判明した。
ある社保庁職員は「部署ごとに一部をプールする仕組みは昔からあったが、経理課による管理は数年前から行われるようになった」としている。2004年12月27日(月)

DPFデータねつ造、三井物産を家宅捜索
 三井物産が排ガス浄化装置のデータをねつ造していた問題で、警視庁は27日朝から東京・千代田区三井物産本社などを家宅捜索しています。
 三井物産本社には警視庁の捜査員およそ40人が家宅捜索に入りました。現在、 関係部署を中心に捜索を行っているものとみられます。
 この問題は、首都圏のトラックやバスのディーゼル車規制に絡み、三井物産の社員らがおととしから去年にかけ、DPF=粒子状物質除去装置のデータを、東京都や神奈川県など1都3県の基準に合うようねつ造し提出していたものです。
 このねつ造データを元に、三井物産はおよそ2万1500台のDPFを販売し、60億円以上の補助金交付を受けました。
 三井物産は今月24日、社員ら4人が不正に関与していたことを明らかにして、 うち3人を懲戒解雇しています。
 不正に関与した社員は社内調査に対し、「いち早く東京都の指定を取り、 市場で優位な立場を確保したいと焦っていた」などと話しているということです。
 警視庁は、 今回の捜索で関係資料を押収し、データねつ造の経緯や組織的関与についても調べを進める方針です。(TBS27日 11:41)

愛国心」とは、結局は鬱屈した劣等感や、その逆である他者蔑視の表れに他ならない。

国交省職員、運転手殴り現行犯逮捕
 「お前ら偏差値が低いんだ」などと言って、タクシーの運転手を殴りケガをさせたとして、国土交通省のキャリアが神奈川県警に逮捕されました。
 傷害の現行犯で逮捕されたのは、国土交通省のキャリアで住宅局建築指導課の係長、富田建蔵 容疑者(28)です。
 富田容疑者は24日午後11時半ごろ、横浜市青葉区の路上で、タクシー運転手の男性(30)に「着きましたよ」と起こされたところ、いきなりドアを蹴るなどして暴れ出しました。
 運転手の男性が富田容疑者を止めようとしたところ、今度は運転手の男性に殴るなどして、全治1週間のケガをさせました。
 通報を受け警察官が現場に駆けつけましたが、富田容疑者は「お前ら偏差値が低いんだよ」などと言って、警察官にも襲いかかろうとしたところを取り押さえられたということです。
 逮捕された時、富田容疑者は泥酔していましたが、現在は取り調べにも応じ、暴行を加えたことを認めているということです。
 これに対して国土交通省では、「事実を確認中だが、事実なら誠に遺憾である」と述べています。(TBS27日 15:30)

 東京新聞の『筆洗』より。これも、この社会の行き詰まりを表しているのだろう。

 ことし流れたニュースでもっとも深刻なのは、自殺者が六年連続三万人を超え、二〇〇三年は三万四千四百二十七人と前年比7・1%も増えたことだ。ことしはもっと増えているのではないかと危惧(きぐ)される▼人生設計できぬ社会への絶望が、中高年の自殺とニートと呼ばれる無業の若者層の急増、子どもの学力低下にもつながっている可能性はある。そうした社会的危機への政治の無関心は、武部自民党幹事長の「一度自衛隊にでも入ってサマワへ行けば…瞬く間に変わる」の暴言に象徴される▼「日本いのちの電話連盟」のデータでも全国の昨年度受信件数は七十一万六千件で前年比19%も増えていた。そのうちの自殺志向は四万三千六百件もあり、同6%増だった▼「いのちの電話」は秘密厳守で専門教育を受けたボランティアによって原則二十四時間体制で無料相談を受け付ける世界的ネットワークである。日本国内でも四十九のセンターに七千四百人の相談員が待機する▼その米国での緊迫したやりとりを、詩人のダイアン・アッカーマンが自身の相談員体験として『いのちの電話−絶望の淵で見た希望の光』(清流出版)にまとめた。「電話をかけてくる人はまだ心が揺れている。自殺するなとは言わない。自殺が唯一の選択肢ではなく、ほかにどんな選択肢が残っているかをともに探る」▼十万人あたりの自殺率で米国の二倍になる日本は今や世界一の自殺大国である。「東京いのちの電話」は03(3264)4343。http://www.inochinodenwa.or.jp/