東京都で青少年の性行動を規制しようとしたり、有害図書の排除や性教育批判といった流れの中で、なんだか白々しく感じていたのは、それによって(車や携帯やパソコンなどのように)この資本主義経済が発展し、それで今かろうじて経済がもっているという側面があると考えていたからだが、このことについて面白い記事が毎日新聞に載っていた。

 発信箱:規格争いと性衝動 西部経済部・伊藤元信
 ソニー松下電器産業などの「ブルーレイディスク」、東芝、NECなどの「HDDVD」。次世代DVD(デジタル多用途ディスク)の規格争いは、かつての「VHS対ベータ」のビデオ規格競争の再現といわれる。「消費者無視」では共通するが、当時とは決定的に違う要素がある。
 1980年代、家庭用ビデオデッキを巡り、松下、東芝などVHS陣営と、ソニーなどベータ陣営が壮絶な市場争いを演じ、VHS陣営が制圧した。ベータ機を所有する消費者は泣きの涙で、私もその一人だった。
 画質で勝るベータがなぜ完敗したのか。VHSは長時間録画に優れ販売店も多く、開発した日本ビクターが技術を他社に提供したりした。開発ストーリーは映画にもなった。
 しかし、物事には裏の顔がある。電器店でVHSデッキを買うとエッチビデオのおまけが付いた。激増したレンタルビデオ店の品ぞろえもVHSが圧倒的に多く、中でも一番回転率が高かったのはVHSのエッチビデオだった。
 つまり人々の「性衝動」がVHS陣営を大きく後押しした、というのが私の見立てだ。それはパソコンの爆発的な普及にも大きく関係していよう。
 だとすれば、次世代DVDの規格争いの決着は簡単にはつかない。性衝動説で読み解くと、その種の画像はパソコンのインターネットで簡単にのぞける環境が既に整っていて、一方の陣営が圧勝する要素にはなり得ないからだ。また泣かないために、勝敗をじっくり見極める「待ちの姿勢」を勧める。(毎日新聞 2004年12月19日 0時08分)

 日経新聞から。

 ノーベル賞学者らの才能開花、夢中になるきっかけ重要
 詰め込み教育でなく、夢中になるきっかけが重要――。若者の理科離れ対策に取り組んでいる東北大大学院の北村勝朗助教授(教授学習心理学)がノーベル物理学賞小柴昌俊氏ら理数科系の著名な学者10人と面会し、才能の開花方法などについて聞き取ったところ、こんな結果が浮かび上がった。
 理数科については、日本の小中学生の基礎学力低下が海外の学会調査で明らかになったばかり。北村助教授は「知識の量や学校の成績でなく、もっと何かに夢中になって工夫したり、面白いアイデアを出したりすることが大切」と話している。
 調査対象は小柴氏や数学のフィールズ賞森重文氏など、国際的に評価の高い賞を受けた学者ら。昨年8月以降に一度ずつ面会し、現在の専門領域にひかれていった過程などについて質問した。
 小柴氏が「昔はハイネの詩が好きで物理は頭になかった」、森氏も「算数の成績は普通だった」と答えるなど、必ずしも昔から理数系科目が得意だったわけではないことが浮き彫りに。(共同07:01)

 昨日の東京新聞から。

 モラルハラスメント 言葉や態度でしつこく叱責、人格否定… 
 「モラルハラスメント」という言葉をご存じだろうか。しつこい叱責(しっせき)や、相手の人格を否定するような言動を繰り返すこと。一つ一つの行為は小さくても、継続することでダメージが大きくなる心理的な暴力。まだ、なじみの薄い考え方だが、多くの職場や家庭に潜在している問題だ。 (岩佐 和也)
 モラルハラスメントの問題に取り組んでいるのは、熊本市の市民団体「こころのサポートセンター・ウィズ」。二〇〇〇年春に発足。心のケアに関するワークショップ、カウンセリングなどの活動をするうち、フランスで提唱されている「モラルハラスメント」という言葉に出合った。
 メンバーの一人で、四十代のA子さんは、職場の先輩の女性からの嫌がらせで、退職に追い込まれた経験があり、この言葉で、自分の苦悩の正体がくっきりと分かった、という。
 当時のA子さんの仕事は事務で、職場に届く封書を毎日のように開封していたが、ある日突然、年配の先輩から「なぜ勝手に開封したの」と、とがめられた。続けて浴びせられた言葉は「あなたは分限をわきまえてない」。A子さんは困惑した。
 嫌がらせは翌日以降も続き、「手紙の保管場所が悪い」「なぜ、手紙が届いたことを最初に連絡しなかったのか」などと、次々と叱責を受け、最後は必ず「あなたは分限をわきまえていない」と言われたという。それが半年以上続いた。
 A子さんは体中にヘルペスができ、ストレスから過食症になった。「恐怖心が募り、その人と同じ部屋にいることさえ嫌になって…」退職した。
 性的な嫌がらせをする「セクシュアルハラスメント」や、職権を利用して理不尽な要求をする「パワーハラスメント」と違い、表面的な被害は小さくて、他人から分かりづらい。
 「他人にはなかなか理解してもらえないことが、モラルハラスメントの対策を難しくしている。今は、こうした実態を広く伝えていくことが大切」と、ウィズでカウンセリング業務を手がける西原鈴代さん(45)。
 精神科医や弁護士などの間でも、この問題に取り組む専門家はまだほとんどいない。
 ウィズに寄せられる相談の中でも、関東地方に住む二十代の会社員男性Bさんのケースは、典型的な「モラルハラスメント」だった。
 書類上のミスについて「こっちで訂正しておくよ」と気軽に言っていた上司が、突然「ミスは自分で訂正すべきだろう。なぜ自分で責任を取らないのか」と怒りだした。そして、ため息交じりに「君は何も理解してないなあ」と付け加えた。
 そんなやりとりが毎日のように続くようになり、Bさんはうつ状態になって、心療内科へ通うようになった。
 「どうしたらいいのか分からなくなった。こっちがミスしたのだから何も言えないのですが、それにしても…」とBさんは振り返る。
 厚生労働省によると、各地の総合労働センターには二〇〇三年度、職場でのいじめや嫌がらせに関する相談が一万千六百九十七件、寄せられた。前年比70%以上の増加だ。
 こうした事態に対応しようと、東京都で十一月下旬、司法書士らによるモラルハラスメントの研修会が開かれた。被害の実態を理解すると同時に、法的にどう対処すればいいのかを考えるのが目的だった。
 モラルハラスメントに対応する法律はまだ整備されていないが、今月二日に施行されたドメスティックバイオレンス(DV)防止法の改正法では、身体に対する暴力だけでなく、言葉や態度などによる精神的暴力も規制の対象行為に加えられ、研修会に参加した司法書士は「心に傷を与える言動そのものが、暴力として認められた意味は大きい」と指摘した。
 講師として参加した西原さんも「研修会が開かれたこと自体、大きな前進。今後は、被害者が自分の受けたことを話せる環境づくりが必要だと思う」と力を込めた。
 ◇モラルハラスメント
 言葉や態度などによる精神的な暴力。長く続くと被害者はうつ病などに陥りやすい。ウィズが作成した冊子によると被害者自身の認識が乏しく、逆に罪悪感に悩まされる場合も。加害者はどちらかといえば自分の価値観を絶対視する傾向が強い人が多く、被害を与えているという自覚も乏しい。被害から脱出するためには、自分の被害を認識すること、話せる環境に身を置くこと−が大切。冊子は1部1000円。ウィズ=電096・339・0276。