虐待のニュース。

 児童虐待:3歳長女死亡 30歳母を傷害容疑で逮捕 東京
 警視庁練馬署は13日、3歳の長女を虐待したとして、東京都練馬区春日町2、無職、大孝玲奈容疑者(30)を傷害容疑で逮捕したと発表した。長女は同日午前、搬送先の病院で死亡した。同署は14日に司法解剖して死因を調べ、虐待との因果関係を捜査する。
 調べでは、大孝容疑者は11月24日午後10時〜25日午前4時ごろ、自宅アパートで長女ありすちゃんの顔を数回殴ったり突き飛ばしたうえ、意識を失った後も浴室で水を大量に飲ませたり冷水シャワーを浴びせ、全身打撲や肺水腫などの重傷を負わせた疑い。ありすちゃんは意識不明になり、大孝容疑者が119番した。殴られた跡があったため、救急隊員が同署に連絡し、同署は25日に逮捕した。
 大孝容疑者は約1年前に離婚し、ありすちゃんと2人暮らしだった。「言う事を聞かないので、8月ごろからしつけのために殴っていた。目を覚まそうとシャワーを浴びせた」と供述している。【長谷川豊】毎日新聞 2004年12月13日 19時11分

 3歳女児が暴行され意識不明 母親の同居人逮捕
 福岡県警小倉北署は12日、同居する女性の二女(3)を虐待したとして北九州市小倉北区白銀1、職業不詳、中山崇容疑者(34)を傷害容疑で緊急逮捕した。中山容疑者は「(二女が)言うことをきかなかったり、食べこぼしたりするのでやった」などと容疑を認めているという。
 調べでは、中山容疑者は10日までに、二女を殴ったり、エアガンで撃つなどの暴行を加えた疑い。中山容疑者と二女の母親は11日夜、二女を含む3人の子を自宅に置いて外出。帰宅した12日未明、二女の意識がないことに気づき、自宅近くの救急病院に連れて行ったという。
 二女は、頭がい内出血の疑いや腕の骨折、顔面打撲など無数のけがを負っていることから、転送先の病院が「虐待の疑いがある」と児童相談所に通報し、警察に連絡が入った。
 長男(4)も顔や体に殴られたような痕があり、児童相談所は長女(9)と長男の2人を保護した。中山容疑者は母子4人と今年7月から同居しており、母親は11月ごろから子供の体にあざがあることに気付いていたという。同署は中山容疑者が虐待を繰り返していたとみて調べている。(毎日新聞 2004年12月12日 20時05分)

 剣道合宿で小学生けが、愛好会指導員3人を書類送検
 剣道愛好家でつくる「常盤台剣友会」(東京都板橋区、会員数約150人)が8月に千葉県で行った合宿で、参加した小学4年の男児(10)が全身にけがをした問題で、警視庁は13日、同会の指導員を務める会社員3人を傷害の疑いで書類送検した。3人は「指導の一環だった」と容疑を否認しているという。
 板橋署の調べによると、3人は、練習態度を改めさせるためとして、防具を着けた状態で竹刀で男児を強打したほか、防具を外した状態でも頭を平手でたたくなどの暴行を加え、2週間のけがをさせた疑い。男児は両腕が腫れ上がり、頭にこぶができ尻に大きなあざができた。病院では、けがに加えて、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の恐れがあると診断され、3日間入院した。(朝日新聞12/13 13:29)

 ■48時間――必ず助けに行くよ
 午後4時すぎ、隣人と名乗る女性から通報が入った。
 「毎日のように聞こえていた泣き声が突然、聞こえなくなった」
 すぐに駆けつけなければならないのか。児童福祉司は迷った。
 すでに43件の虐待事案を抱えている。山積みの書類、保健所の担当者との打ち合わせ……。それに、やけどの跡やあざがあるというわけでもない。
 日が暮れてから、通報のあった家を訪ねた。玄関口で幼児が母親の足元にまとわりついている。奥で遊んでいる女の子の姿も見えた。部屋は散らかっていない。
 虐待はない、と判断した。ところが、安心するのは早かった。
 「働きづめの夫は、休みの日になると遊びに出てしまう。上の子にくそババアなんて言われると、カーッとしちゃって」
 専業主婦の母親の言葉に危うさを感じた。1時間近く耳を傾けると、いくらか落ち着いてきた。
 虐待の芽を摘み取れたのは、足を運んだからこそ、だった。
 通報を受けて48時間以内にこどもを目で見て確認する。全国で唯一、埼玉県だけがそう義務づけている。「埼玉方式」が生まれたのは不名誉からだった。
 〈虐待死全国一 98年度4件〉
 5年前の春、埼玉新聞が1面で報じた。直後に、県内の児童相談所長6人が集まった。口火を切ったのは、県中央児童相談所所長の今井宏幸さん(62)だった。
 「通報を受けたら、先延ばししない。時間を区切ろう」
 人手不足にあえぐ福祉司にさらなる負担を強いるのか、と反対の声があがった。
 「じゃあ、このままこどもたちを見殺しにするのか」
 場が静まった。何時間にするか。そう畳みかけた。24時間では現場がもたない。72時間では、金曜日に通報を受けても月曜日まで放っておけることになる。
 結局、48時間に決まった。
 「時限を、と訴えたのは、ある部下の影響があったんですよ」
 一線を退いた今井さんは振り返る。通報を受けると必ず、「突撃だぁ」と飛び出していき、「時間を区切らなきゃダメだっ」と口癖のように繰り返していた。
 「彼がいなかったら、思いつかなかったんじゃないかな」
 その部下とは、越谷児童相談所の副所長だった藤井東治(とうじ)さんのことだ。
 この夏、クモ膜下出血で亡くなった。56歳だった。「入院から2日。意識は戻らなかったけど、十分にお礼を言う時間をくれた」。妻の和子さん(63)は言う。
 職場の外でも動き回っていた。NPO法人「埼玉子どもを虐待から守る会」の理事、「日本子どもの虐待防止研究会」運営委員。「いのちの電話」相談員の研修の講師も引き受けていた。
 担当した少女を自宅に引き取ったこともある。母親が家を出て、薬物中毒の父親は傷害罪で逮捕された。少女が19歳になると写真を撮って、服役中の父親に渡した。
 「やりたいことが山ほどあってとにかく欲張りな人。まるで、こどもみたいでね」(和子さん)
 たばこのピースと酒を手放すことがなかった。
 昨年暮れ、藤井さんは埼玉新聞記者の小宮純一さん(46)を居酒屋に誘った。小宮さんが児童虐待の連載記事を書いて以来、5年余りのつき合いだ。
 ふたりで1升をあけるころ、小宮さんが問いかけた。なぜ48時間なのか、と。
 「それはね、約束なんだよ」
 藤井さんがコップの酒をすすった。曇りガラスの向こうで初雪が舞っていた。
 「どんなに厳しい状況にあっても48時間は生き延びてくれ。そしたら必ず行くからっていう、こどもとの約束なんだ」
 埼玉では今年、虐待で命を落としたこどもはいない。(諸永裕司)朝日新聞12月12日