読売新聞の社説。

[教師処分]「尊敬できない先生が増えている」
 教え子にいかがわしい行為をする教師が増えている。だが、それを根絶しようという教育関係者の強い姿勢が見られない。これでは安心してわが子を学校へ送り出せない。
 昨年度、わいせつ行為で懲戒処分を受けた公立小中学校、高校などの教師は百五十五人で、過去最多だった。五年前の三倍という急増ぶりだ。
 免職になったのは百七人、停職は四十人。免職のうち六十一人は、児童や生徒を対象としたわいせつ行為だった。
 女子児童を車に乗せて体に触ったり、「会いたい」などのメールを頻繁に送ったりしていた小学校教師。進路指導中に嫌がる女子生徒に抱きついてキスするセクハラ行為をした高校教師。こうした先生が直ちにクビになるのは当然だ。
 だが、吹奏楽部の生徒を「体力強化」と称してプールで泳がせ、女子の体に触るなどしていた中学教師が停職一か月の処分で済んでいたケースもあった。
 これには、文部科学省の幹部も「甘いのではないか」と首をかしげる。処分権限は都道府県の教育委員会にあるため、個別の処分内容に是正を促すようなことはできないという。
 文科省は三年前から、各教委に懲戒処分の基準を作って公表し、その中に、児童らに対するわいせつ行為は即、懲戒免職とすることを明示するよう要請している。抑止効果を狙ったものだ。
 ところが、応じたのは十二都県・政令市の教委のみ。基準がないため、過去の甘い懲戒事例などを参考に、処分を決めているようなところがほとんどだ。
 教師には、教育者としての高い使命感と倫理観が求められる。養成、採用、研修を通じ、資質の向上を図ることが急務だ。同時に、不適格な教師には、今以上に厳格な対応が必要となろう。
 一方、卒業式などの国歌斉唱の際、校長の職務命令に従わず、起立しなかったなどとして懲戒処分を受けた教師も百九十四人いた。ほとんどが東京都の教師たちで、「命令は内心の自由の侵害だ」などと主張し、裁判に訴えている。
 同様に、教師の政治活動は法律で禁じられているのに、政治的主張を載せたビラを配るなどして八人が処分された。
 山梨県教組の傘下の政治団体が、今夏の参院選で教師らから多額の選挙資金を集め、一部を民主党議員の政治団体に寄付した疑惑が表面化している。自民党が追及し、文科省も調査を始めた。
 倫理観や法を守る意識に欠けた教師、公務員としての義務を怠り、権利ばかり主張する教師。子供たちは、そんな先生を尊敬するだろうか。