自立とは

 今日の産経新聞の『主張』。

■【主張】中学生ニセ札事件 重罪の認識を植え付けよ

 中学生の犯罪もついにここまできたか、と言わずにはいられないのが、警視庁少年課に検挙された東京都世田谷区の区立中学二年生の男子生徒ら九人が関係した「ニセ札作り」事件である。
 調べでは、このうちの二年生の一人がパソコンで偽造した旧千円札百枚のうち八十枚を校内で友人などに配り、自らは自動販売機で使ってつり銭などをだまし取ったという。
 自分だけの秘密にしておかなかったことから、金欲しさというより、遊び半分か、パソコンを使ったニセ札作りの知識や自販機をだませるほどの技術を誇示したかったものと思われるが、「ニセ札作りは重罪」という事実を知らなかったのではないか。
 かつて米国で原爆の作り方を説明した文書が出回り、これをもとに高校生が実際に原爆を作ってしまったという報道があったが、今度の中学生も紙幣の偽造方法を紹介するインターネットのサイトや雑誌を参考に研究を重ね、自販機もだますニセ札を“完成”させたという。
 こうした情報が野放しなのは問題だが、言論・表現の自由との兼ね合いで禁止することも難しい。しかし、最近多発している自殺願望の他人同士がインターネット上の情報で集まり、意味のない集団自殺をしている実態を見るにつけ、なにか有効な防止措置がとれないものかと考えざるを得ない。
 一方、今度の中学生の場合、詳しい動機は今後の調べを待たねばならないが、最近の情報機器の急速な進歩で、これまでにもパソコンとプリンターを使って、みかけは精巧なニセ札を作った大人が何人か検挙されているが、インターネット上の情報をもとに作ったというのはなかった。
 ニセ札(硬貨を含む)が通貨の信用を傷つけ、ひいては国の存立をも危うくする故に、各国とも通貨の信用維持には全力を投入している。このため刑罰も重く、日本では江戸時代には磔(はりつけ)、獄門という極刑に処せられた。現刑法では懲役三年以上無期懲役という列車転覆罪と同等で、殺人、現住建造物放火、強盗致死に次ぐ重罪である。
 情報通信技術に通じた子供を持つ親は、子供が知らないうちにこのような重大な犯罪に手を染めないように監視することも必要だ。

 集団強姦や集団殺人といったものがたびたび繰り返し起こる中で、本当に厳罰化や監視体制の強化や、あるいは道徳教育や奉仕活動導入などで、犯罪は減っていくのだろうかと疑問に思う。
 一方で、子どもたちはますます狭い空間に押し込められ、追いたてられている状況の中で、もはや将来への想像力や他者への共感能力はなくなり、ただ欲望だけが膨張し、平気で人を傷つけている。
 大人たちは、命の大切さや、国を愛する心を強調しながら、米国に気に入られようと戦争に邁進し、自分の利益の追求のため自然破壊に邁進している。

 京都議定書に参加せず・米高官が改めて強調

 【ワシントン=吉田透】米国務省のワトソン上級交渉官(気候変動問題担当)は2日の記者会見で、地球温暖化防止に向けて来年2月に発効する京都議定書に米国が参加する考えがないことを改めて表明した。
 ワトソン交渉官は二酸化炭素など温暖化ガスの排出抑制に向けて「技術開発を加速するなど、米国も真剣に取り組んでいる」としながらも、日米などの先進国に排出削減の数値目標を義務づける議定書への参加については「米経済に壊滅的な打撃を与えかねない」と強調。2001年に不参加を表明したブッシュ政権の考えに変わりがないことを示した。
 日本や欧州連合(EU)加盟国など京都議定書参加国が2012年以降に向けた温暖化防止の新たな国際的枠組みを議論しようとしていることについては「(排出削減の)達成時期や数値目標を定めるための交渉は時間のムダだ」と指摘。日、EUなど距離を置く方針を示した。(日経新聞18:42)

 自分の欲望を自制し、将来のことや相手の痛みを考えられるようになることこそが、自立した人間、自立した国になることの第一条件ではないだろうか。