刑法厳罰化と犯罪抑止効果

 犯罪被害者基本法成立:「スタートライン」評価 被害者ら

 「権利の主体として初めて認められた」。1日に成立した犯罪被害者等基本法を、被害者たちは高く評価した。同時に成立した改正刑法・刑事訴訟法には罰則強化が盛り込まれ、被害者感情にも応えた形だ。ようやく歩み出した被害者対策だが、具体策が決まるのはこれから。厳罰化による犯罪抑止効果には疑問の声もあり、課題はなお残されている。【森本英彦】
 ■スタートライン
 「全国犯罪被害者の会」の代表幹事、岡村勲さん(75)らは1日、東京都内で会見し「被害者の思いが報われた」と喜びを語った。97年に逆恨みから妻を殺された岡村さんは「被害者は何の権利も認められず、十分な支援もなく、好奇と偏見の目にさらされてきた。やっとスタートラインに立った」と話した。
 基本法は「理念法」の性格が強く、具体的な施策は内閣府にできる犯罪被害者等施策推進会議が検討することになる。諸沢英道・常磐大大学院教授(被害者学)は「法律にいかに魂を入れるかが問われている。推進会議は施策の具体的目標を設けて、第三者機関がそれを評価する仕組みを作るべきだ」と指摘する。
 全国犯罪被害者の会は具体策として、被害者自らが刑事裁判で被告に質問できる制度の創設などを強く求めている。97年にダンプカーにはねられ二男隼(しゅん)君(当時8歳)を失った片山徒有(ただあり)さん(48)は「同じ思いを誰にも味わってほしくない。再犯罪、再被害を防ぐことを第一に、被害者の視点で施策を決めてほしい」と訴える。

 ■重罰化効果に疑問も
 刑法改正案の審議では、重罰化の犯罪抑制効果を巡って議論が交わされた。参院法務委の参考人質疑で石塚伸一龍谷大教授(刑事法)は「改正は百害あって一利ない」と手厳しい。「刑の長期化で受刑者の社会復帰は困難になり、犯罪予備軍を増大させる。刑務所の過剰収容も悪化する」と主張する。
 これに対し、衆院法務委で意見を述べた前田雅英・東京都立大教授(同)は「改正は妥当」との立場だ。「凶悪犯罪の増加は間違いなく、早急に何か手を打たねばならない。法定刑引き上げは国民への一つのメッセージだ」と反論する。

 南野知恵子法相も「罰則強化だけで治安が回復するとは思わない」と認めており、矯正や保護を含めた総合的な対策が求められる。(毎日新聞 2004年12月1日 14時35分)

 改正刑法・刑事訴訟法が成立 重罰化、時効は25年に

 犯罪の刑の引き上げなどを盛り込んだ改正刑法・刑事訴訟法が1日、与野党の賛成多数で参院本会議で可決、成立した。1907年に刑法ができて以来、法定刑の抜本的な見直しは初めて。凶悪犯罪が近年目立つことや性犯罪に対する罰則が低いとの指摘などを受けて重罰化の方向で改めたと、政府は説明している。
 改正の柱は、(1)懲役などの有期刑の上限引き上げ(2)生命や身体に対する犯罪の法定刑の引き上げ(3)公訴時効の期間を最長15年から25年に延長する――など。集団強姦(ごうかん)罪と集団強姦致死傷罪が新設されたことも特徴だ。
 改正の理由について法務省は、凶悪犯罪に対するいまの法定刑が被害者や国民感覚に合わない▽有期刑の上限と無期刑との差が大きい▽法制定時よりも国民の平均寿命が延びた――などを挙げて、「厳罰化ではなく適正化だ」としている。
 刑の幅の引き上げで、裁判官が宣告する刑も重くなると予想される。学者や弁護士の中からは刑の重罰化が犯罪の抑止に与える効果を疑問視する意見も出ている。(朝日新聞 12/01 10:43)

 私は、刑法改正自体には別に反対しないが、それが犯罪抑止になるとは思わない。むしろその流れは、犯罪を助長する可能性すらあると考えている。
 それは、憲法改正教育基本法改正、あるいは『国旗国歌』の強制と同じように、社会を窮屈にし、生きづらさを増していかせるのではないかと危惧するからである。

 スーパーフリー元副代表、2審も懲役10年・東京高裁

 大学生らのイベントサークル「スーパーフリー」による集団暴行事件で、3件の準性的暴行罪に問われた元同サークル副代表の元早大生、小林潤一郎被告(23)の控訴審判決が1日、東京高裁であった。植村立郎裁判長は懲役10年とした一審・東京地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。
 植村裁判長は「いずれの犯行にも積極的に加わり重要な役割を果たしており、刑事責任は極めて重大」と述べた。
 小林被告側は控訴審で、一審判決が「被害者らにも不用意な面があった」としたことを挙げて「刑が重すぎる」と主張したが、植村裁判長は「計画的に泥酔させた手口に照らし、『不用意な面があった』とした一審判決の判断は支持できない」とした。
 同事件で起訴された14人全員が一審で実刑判決を受け、小林被告は元同サークル代表、和田真一郎被告(30)=控訴中=の懲役14年に次いで重い刑を言い渡された。 (13:00)

 国士舘大サッカー部員15人逮捕、少女にみだらな行為

 国士舘大学(東京都世田谷区)のサッカー部員の男子学生15人が今年6月、当時15歳だった少女(16)に集団でみだらな行為をしていたことがわかり、警視庁少年育成課と町田署は1日、15人を児童福祉法違反と都青少年育成条例違反の疑いで逮捕した。
 逮捕されたのは、同大1―3年のサッカー部員(18―21歳)。調べによると、15人は町田市鶴川の部員の1人の自宅アパートで、少女にみだらな行為をした疑い。少女は、部員の1人の友人だった。
 同大のホームページによると、同大サッカー部は、1956年創部で、現在の部員は245人。町田市内の同大グラウンドで練習している。社会人サッカーの日本フットボールリーグ(JFL)にも、大学として唯一参加している。(読売新聞) - 12月1日14時38分更新

 鳴沢村・19歳刺殺 容疑者が供述−−「刑務所入れば生き延びられる…」 /山梨

 鳴沢村コンビニエンスストア「ローソン山梨鳴沢店」の駐車場で、近くに住むアルバイト店員で専門学校1年、渡辺亜都美さん(19)が殺害された事件で、逮捕された東京都足立区、無職の男(45)が「自殺しようと思ったが、死にきれなかった。人を殺して刑務所に入ればご飯も食べることができ、生き延びられると思った」などと供述していることが29日、富士吉田署の調べで分かった。
 調べによると、男は岐阜県の出身で、都内でタクシー運転手として働いていた。今月中旬から無断欠勤し、青木ケ原樹海で自殺するために乗用車で県内に入ったという。数日間、車で寝泊まりをし、逮捕された時の所持金は数百円程度だった。渡辺さんを狙った理由については「誰でも良かった。女の子の方が抵抗しないと思った」と供述しているという。
 凶器とみられる血痕が付着した果物ナイフ(刃渡り約10センチ)が29日、男の乗用車から見つかった。また、渡辺さんの死因は、司法解剖の結果、出血性ショック死と分かった。
 男は東京都内の医院に通院しており、刑事責任能力の有無についても調べている。
 渡辺さんは看護師を目指して勉強していた。アルバイト先のコンビニエンスストアで一緒に働いていた店員は「お客さんからかわいがられるまじめで明るい子。とても悔しい」と声を震わせた。【中村有花、鷲頭彰子】毎日新聞 2004年11月30日<< 

 厳罰化したからといって、こういう犯罪は決して減ることはないだろう。