『両親殺害』と『抱っこ』

 また2日続けて凶悪な犯罪が起きてしまった。
 昨日の水戸での両親殺害に続いて、今日も同じ茨城県土浦市で両親と姉を殺害するという事件が大きく報じられている。そして、どちらも犯人は『無職』の『引きこもり』らしく、親との関係が根底にあるらしい。

 今、朝日新聞の社説で少子化問題を連続して取り上げていて、今日のは…

少子化(2)――赤ちゃんを抱っこしよう


 「日本では、ほとんどの子どもが赤ちゃんを背負っている」

 大森貝塚を発見した米国人学者モースが日記にこう書いたのは、1877(明治10)年のことだ。

 戦後もしばらくの間、子どもの子守姿はどこでも見られた。上の子が妹や弟の面倒を見る。兄や姉の赤ちゃんを世話することも珍しくない。子どもは赤ちゃんに触れて育つのがふつうだった。

 子どもの周りから赤ちゃんがいなくなって久しい。きょうだいが減り、核家族化も進んだためだ。

 女性にとっても男性にとっても、自分の子が初めて抱っこする赤ちゃんというケースが増えている。赤ちゃんを欲しいと思うどころか、赤ちゃんを持つことの不安ばかりが先立つのもむりはない。

 これではいけない。子どものときから赤ちゃんと触れ合う機会をつくろう。自分で抱っこすれば、赤ちゃんの可愛さや命の不思議さを体で知ることができる。そんな試みが広がっている。

 10月初め、岩手県水沢市の常盤小学校に10人の赤ちゃんが母親と一緒にやってきた。放課後に残った100人の子どもたちが交代で抱っこした。話しかけたり、ほおずりしたりする子もいる。尻込みしていた男の子も列に並んだ。

 水沢市は2年前から中高生と赤ちゃんの触れ合い事業を続けてきた。週末になると、生徒が子どもセンターなどに集まり、赤ちゃんを抱いたり、おしめを換えたりする。体験した生徒たちが生命の尊さや性の悩みを語り合う集会には250人が参加した。小学校へと広げた赤ちゃん派遣はその第2弾である。

 中高生と赤ちゃんの交流は東京都杉並区や京都市なども先駆的に取り組んできた。共通するのは生徒の驚きの声だ。

 「赤ちゃんが1人いるだけで、部屋の中のみんなが笑顔になる。赤ちゃんはすごい力を持っているんだ」

 大切なのは赤ちゃんの成長を実感することだ。指導する保育士たちはそう口をそろえる。それには触れ合いを続けていくことが欠かせない。

 鳥取県立赤碕高校では、8年前から保育園や老人施設との交流を授業に取り入れてきた。生徒たちは1年生のときに、担当する乳幼児やお年寄りを決める。3年間、毎週のように訪れる。男子も女子もエプロン姿で育児を体験し、成長を見守っていく。

 担当の高塚人志教諭は語る。「生徒は生命に触れながら、自分が役に立っていることを実感します。そして、自分を好きになっていくんです。自分を肯定できれば誰にも優しくなれる。うちの生徒は虐待とは無縁のいい親になりますよ」

 中高生と赤ちゃんの触れ合い事業は、厚生労働省が昨年度から少子化対策の一つとして補助を始めた。今年度は700市町村分の約3億円を予算化し、200自治体が申請している。

 次の世代へ命をつなぐことの大切さを子どもたちに実感させたい。

 というものだった。
 一目見たとき、あまりにも当たり前すぎて「何を今さら…」と思ったのであるが、上の事件と関連して、ふと考えてみる。

「生徒は生命に触れながら、自分が役に立っていることを実感します。そして、自分を好きになっていくんです。自分を肯定できれば誰にも優しくなれる。うちの生徒は虐待とは無縁のいい親になりますよ」

 本当に、そうなのだろうか。それについて反対するつもりはないが、本当に重要なことは、逆のところにあると思う。
 よく『虐待の連鎖』といわれる。虐待されて育った子供が、またその子供を虐待するようになる。さらに、厳しく押さえつけられ、いい子でおとなしく育った子供が、いつしか親に反抗し、暴力をふるい、殺害する。
 この犯人達は、ちゃんと『抱っこ』され育てられてきたのだろうか。