参拝“慎重派”も靖国議連を設立 自民
 小泉純一郎首相の靖国神社参拝をめぐり、自民党の議連「靖国問題勉強会」(代表世話人野田毅自治相)が十二日、党本部で初会合を開いた。「参拝の是非を論ずるのでなく白紙から勉強する」と説明するが、発起人には野田氏や加藤紘一元幹事長ら首相の靖国参拝に慎重姿勢を示す議員が多く名を連ねている。党内では最近、参拝支持派の議連も発足、対中国、韓国外交をめぐる党内の路線対立が表面化してきた。
 初会合には、衆参議員二十七人、代理十五人が出席した。中曽根内閣で官房長官を務めた後藤田正晴氏が、中曽根康弘元首相が公式参拝を取りやめた経緯などを説明。「サンフランシスコ講和条約を順守し、国際的な信頼を勝ち取ることが大切だ」と強調し、「A級戦犯」についても「戦争の指導者には結果責任がある」と合祀(ごうし)に疑問を呈し、首相は参拝を自粛すべきだとの考えを示した。今後は週一回ペースで勉強会を開き、学者や靖国神社関係者らを招いて議論を続ける方針。野田氏は記者団に中立的な立場を強調しつつも、「自粛を求めると親中派だと、レッテルを張るやり方は危険だ。ナショナリズムをあおることは避けるべきだ」と、参拝支持派を暗に批判した。
 一方、参拝支持派の「平和を願い、真の国益を考え靖国参拝を支持する若手国会議員の会」(平和靖国議連、松下忠洋会長)は十三日にジャーナリストの櫻井よしこ氏を招き、三回目の会合を開く予定だ。
 相次ぎ発足した両議連の動きに、「ただでさえ郵政民営化で党内が混乱しているのに、党内の亀裂がさらに拡大するのでは」(党中堅)と危惧(きぐ)する声も出ている。
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 ■「靖国問題勉強会」発起人(敬称略)
 野田毅加藤紘一中馬弘毅高村正彦衛藤征士郎大島理森園田博之小坂憲次萩野浩基渡辺喜美北川知克後藤田正純竹下亘真鍋賢二林芳正舛添要一産経新聞7月13日)

 靖国遊就館ツアー、町田市教委が後援
 靖国神社の博物館「遊就館」に小中学生を連れて行く歴史探索ツアーを東京都町田市の町田青年会議所(JC)が企画し、同市教育委員会が後援していることがわかった。同館は明治以降の戦争を「自存自衛のため避け得なかった戦争」と位置づけ、「殉国の英霊を慰霊顕彰する」ために兵器や兵士の遺品を展示している。都教職員組合町田支部は「特定の歴史観にお墨付きを与えることになる」として12日、市教委に後援の撤回を申し入れた。
 ツアーは町田JCの「三世代教育委員会」が8月3日に催すもので、小学5、6年生と中学生計80人の参加を募る。JC会員やその親、祖父母らを案内役として、東京・両国の江戸東京博物館靖国神社遊就館を見学する計画だ。
 遊就館を選んだ理由について、同JCは「戦争資料を展示しており、年長の世代と交流しながら日本の歴史が感じられる」と説明。神社参拝はしないという。
 同JCは6月29日、見学先を「江戸東京博物館遊就館」とする簡単な文書を添え同市教委に後援を依頼。同市教委は同30日に承認した。
 市教委の後援基準を定めた要綱には、「宗教活動、政治活動またはこれに類する活動ではないこと」「委員会の教育行政の運営に関する方針に反しないものであること」といった項目がある。
 同市教委教育総務課は今回の後援について「ツアーが基準に反しているとは言い切れない。JCの事業は何度も後援しているので、すんなり承認された。遊就館靖国神社の施設とは知らなかった」と説明している。
 これに対して、都教組町田支部渡辺真理子書記長は「中立性に欠ける。後援は撤回すべきだ」と話している。(朝日新聞2005年07月13日06時23分)

 靖国神社に顕彰碑 パール判決の意義を刻む
 小泉純一郎首相の靖国神社参拝をめぐり、いわゆる「A級戦犯」の位置付けが問題になる
中、極東国際軍事裁判(東京裁判)で全被告の無罪を主張したインド代表判事、ラダビノード・パール博士(1886−1967年)の業績をたたえる顕彰碑が東京・九段の靖国神社境内に建立され、25日、インド大使館関係者らを招き除幕式が行われた。同神社は「日本無罪論を展開したアジアの学者がいたことを思いだしてほしい」としている。
 顕彰碑は高さ2.1メートル、幅1.8メートルで、京都市東山区の霊山(りょうぜん)護国神社境内に設置されている碑と同じ形状。パール博士の上半身を写した陶板が埋め込まれ、全員無罪とした東京裁判の個別意見書(パール判決)の意義などが刻まれている。
 パール博士は東京裁判の11人の判事中、唯一の国際法学者で、同裁判の実態を「戦勝
国が復讐(ふくしゅう)の欲望を満たすために、法的手続きを踏んでいるようなふりをしている」と看破。米軍による原爆投下などにも触れた上、東条英機元首相ら判決が「A級戦犯」とした被告を含む全員の無罪を主張した。「時が熱狂と偏見をやわらげた暁には…過去の賞罰の多くに、そのところを変えることを要求するであろう」と予言したパール判決はその後、世界中の多くの政治家や学者に認められている。
 除幕式にはインド大使館のビー・エム・バリ駐日武官を含む関係者約40人が参加。神式の祭典の後、建立に協力したNPO法人「理想を考える会」の羽山昇理事長が、「顕彰碑が靖国神社に設置された意義は大きい。歴史に対する自虐的風潮などの根源は東京裁判にあり、その問題性を見直すきっかけになれば」とあいさつした。(産経新聞2005年6月26日)