「真摯に学習」「愛国心」明記…教育基本法改正原案
 政府が、21日召集の通常国会への提出を目指している教育基本法改正案の原案が12日、明らかになった。
 小中一貫教育など義務教育年限の弾力化を進めるため、現行法にある「9年」の年限を削除することや、深刻化する子供の学力低下、若者の無業者(ニート)増加を踏まえた規定を新設することが特徴だ。「学校教育」では、「規律を守り、真摯(しんし)に学習する態度を重視する」との表現を盛り込み、学力低下に歯止めをかけることを目指す。
 焦点の愛国心については、教育の目標として「伝統文化を尊重し、郷土と国を愛する態度を養う」と明記する。
 政府は1月末までに各条文の表現などを最終調整し、自民、公明両党の実務者で構成する「与党教育基本法改正協議会」(座長=保利耕輔・元文相)に提示する。
 改正案の政府原案は現行法の11条に、「生涯学習社会への寄与」「家庭・学校・地域の連携協力」「家庭教育」「幼児教育」「大学教育」「私立学校教育の振興」「教員」「教育振興基本計画」の8条文を追加。現行法の「男女共学」の条文は「教育の目標」に包括し、計18条で構成する。
 「教育の目標」では、「公共の精神の重視」も明記する。義務教育年限は基本法から削除し、学校教育法で義務教育のあり方を新たに定めることにする。将来の改正を容易にして「六・三制」の弾力化論議を加速する狙いがある。中央教育審議会文部科学相の諮問機関)で、「小学校5年、中学校4年」なども認め、区分を柔軟にする検討を進めていることなどを踏まえたものだ。政府は、幼児教育の義務教育化なども将来の検討課題とする考えだ。
 「学校教育」に関する「真摯に学習する」などの表現については、2003年の中教審答申では、「子供に義務を課すことはできない」として見送られたが、日本の子供の学力低下が深刻になっていることなどを考慮し、明記することにした。
 また、若者の無業者「ニート」の急増を踏まえ、「教育の目標」に、将来の生活設計を考える教育を行う文言も盛り込む。学校現場で就業体験学習などを促進させる狙いがある。
 新設の「家庭教育」では、「親は、子の健全な育成に努める」と子供のしつけの重要性を強調。私立学校については、現行の私学助成制度の法的裏付けとなるよう、「国・地方公共団体は振興に努める」と明文化する。
 「愛国心」の扱いをめぐっては、公明党が「国を大切にする」との表現を求め、「国を愛する」を主張する自民党と調整が続いている。政府は、現在の小学生の学習指導要領に「国を愛する心情を育てる」と明記されていることなどから、「愛する」が望ましいと判断している。
 宗教教育については、「宗教に関する寛容の態度」を尊重するとした現行規定を踏襲する。
 ◆教育基本法改正案原案の要旨
 第1条(教育の目的)教育は、人格の完成を目指し、心身共に健康な国民の育成を目的とする。
 第2条(教育の目標)教育は以下を目標として行われる。▽真理の探究、豊かな情操と道徳心のかん養、健全な身体の育成▽一人一人の能力の伸長、創造性、自主性と自律性のかん養▽正義と責任、自他・男女の敬愛と協力、公共の精神を重視し、主体的に社会の形成に参画する態度のかん養▽勤労を重んじる▽生命を尊び、自然に親しみ、環境を保全し、良き習慣を身につける▽伝統文化を尊重し、郷土と国を愛し、国際社会の平和と発展に寄与する態度のかん養。
 第3条(教育の機会均等)国民は、能力に応じた教育を受ける機会を与えられ、人種、信条、性別等によって差別されない。
 第4条(生涯学習社会への寄与)教育は、学問の自由を尊重し、生涯学習社会の実現を期す。
 第5条(家庭・学校・地域の連携協力)教育は、家庭、学校、地域等の連携協力のもとに行われる。
 第6条(家庭教育)家庭は子育てに第一義的な責任を有するものであり、親は子の健全な育成に努める。国・地方公共団体は家庭教育の支援に努める。
 第7条(幼児教育)幼児教育の重要性にかんがみ、国・地方公共団体はその振興に努める。
 第八条(学校教育)学校は、国・地方公共団体及び法律に定める法人が設置できる。規律を守り、真摯(しんし)に学習する態度を重視する。
 第9条(義務教育)国民は子に、別に法律に定める期間、教育を受けさせる義務を負う。国公立の義務教育諸学校の授業料は無償とする。
 第10条(大学教育)大学は高等教育・学術研究の中心として、教養の修得、専門の学芸の教授研究、専門的職業に必要な学識と能力を培うよう努める。
 第11条(私立学校教育の振興)私立学校は、建学の精神に基づいて教育を行い、国・地方公共団体はその振興に努める。
 第12条(教員)教員は、自己の崇高な使命を自覚し、研究と修養に励む。教員の身分は尊重され、待遇の適正と養成・研修の充実が図られる。
 第13条(社会教育)国・地方公共団体は、学習機会の提供等により振興に努める。
 第14条(政治教育)政治に関する知識など良識ある公民としての教養は、教育上尊重される。学校は、党派的政治教育、政治的活動をしてはならない。
 第15条(宗教教育)宗教に関する寛容の態度と一般的な教養ならびに宗教の社会生活における地位は、教育上尊重される。国公立の学校は、特定の宗教のための宗教教育、宗教的活動をしてはならない。
 第16条(教育行政)国は、教育の機会均等と水準の維持向上のための施策の策定と、実施の責務を有する。地方公共団体は、適当な機関を組織し、区域内の教育に関する施策の策定と実施の責務を有する。
 第17条(教育振興基本計画)政府は、教育の振興に関する基本的計画を定める。
 第18条(補則)この法律に掲げる諸事項を実施するため、適当な法令が制定される。
(2005/1/13/03:01 読売新聞 無断転載禁止)

 イラク大量破壊兵器 米調査団、捜索打ち切り 『存在せず』
 【ワシントン=豊田洋一】マクレラン米大統領報道官は十二日の記者会見で、イラク大量破壊兵器を捜索していた米政府調査団(団長・ドルファー中央情報局=CIA=特別顧問)が昨年十二月、同兵器を発見できないまま、捜索活動を打ち切っていたことを明らかにした。
 ドルファー団長は昨年十月、イラク戦争開戦当時、イラク国内に大量破壊兵器は存在せず、核、生物、化学兵器を開発する具体的な計画もなかったとする報告書を米議会に提出しているが、同報道官によると、二月に公表される最終報告書も、大量破壊兵器が存在しなかったとする結論は変わらないという。
 ブッシュ大統領は、二〇〇三年三月に開戦したイラク戦争の「大義」に、大量破壊兵器保有や開発計画を挙げていた。同兵器を最終的に発見できなかったことで、開戦の正当性が再び厳しく問われることになる。
 十二日付の米紙ワシントン・ポストによると、捜索打ち切りは昨年十二月のクリスマス前。大量破壊兵器の存在を示す新たな情報がなかったことに加え、反米勢力によるテロ攻撃などで治安が悪化したためという。
 捜索終結に関し、民主党下院のペロシ院内総務は声明を発表し、「大統領はなぜ、長期間にわたって開戦理由について誤ったかを米国民に説明する必要がある」と、追及する方針を表明した。
 これに対し、マクレラン報道官は、情報機関改革に努める姿勢を示しながらも、「危険な地域に自由を定着させることが、世界をより平和にする」と、イラク戦争の正当性を重ねて強調した。(東京新聞

(2005.01.12産経新聞)■「キレる子供」解明へ文科省が検討会
 分野の壁越え専門家が協力 教育現場とも連携強化
 衝動的に暴力を振るう「キレる子供」が社会問題化するなか文部科学省は十一日、「キレる」状態を医学や心理学などの科学的立場から解明し、教育現場に生かすための検討会を立ち上げ、第一回会合を開いた。医師や栄養学、精神医学、社会学などの専門家が参加し、研究分野の壁を取り払い問題解決にあたることなどが申し合わされた。
 設立されたのは「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会」(座長・有馬朗人日本科学技術振興財団会長)。ここ数年、脳科学発達障害など子供の成長をめぐる心の問題の解明が著しいが、個々の研究成果が連携されなかったり、教育現場に正しくフィードバックされないなどの問題点が指摘されていた。
 検討会では「虐待を受けた愛着障害の子供への対応は、思春期より小学生のほうがよい」「人とのつながりが持てない社会力の衰弱は、明らかに脳の機能の劣化につながっている」など、それぞれの分野から問題点を挙げた。教育現場との連携についても「先生方も自信をなくしていて、子供に問題があるとすぐに病院にきて診断名を求める。病院側も、すぐに診断名を羅列しないよう自戒が必要だ」との意見も出された。
 有馬座長は「学問分野の間の壁は厚く、こうした研究は極めて難しい。心の問題は、人間の尊厳という問題もあるが、きちっとやれば大きな成果が得られる」と語った。検討会は今年七月をメドに、個々の研究成果を教育の現場に生かせるよう対応を検討する。
 「キレる」子供を科学的に解明しようとする研究は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)がゼロ歳児、五歳児一万人の追跡調査を計画するなど、脳科学の分野などからの取り組みが始まっている。文部科学省は「こうした研究がどこまで、教育現場に応用できるか可能性を探っていただきたい」(児童生徒課)としている。
 文科省のまとめでは、平成十五年度には学校内のいじめの件数が八年ぶりに増加に転じ、暴力行為も三年ぶりに増加。不登校の子供は十二万六千人あまりと、高い数値で推移している。