死刑必要の認識「変わらない」 刑場視察の南野法相

 南野法相が6日、東京都葛飾区の東京拘置所を視察した。死刑が執行される刑場を見て「厳かな環境が準備されており、納得した」と述べた。死刑制度が必要との認識については「今までの気持ちと変わらない」「凶悪、重大な犯罪が多い中、国民的な感情のうえに死刑がある」と語り、判決に従って刑の執行を命ずることが自分の立場だという認識を改めて示した。(朝日新聞12/06 19:20)

 死刑という制度についてどう考えるか。
 それにはまず、次のことを考察する必要があるだろう。──果たして死刑制度があるから、凶悪犯罪が抑止され、この程度ですんでいるのか。それとも、それがあってもなくても変わらないのか。はたまた、死刑制度が、逆に凶悪犯罪を誘発するのか。

 余録:音の日
 「メーリさんの羊、羊、羊……」。軟らかい錫(すず)の箔(はく)をはった円筒をハンドルで回しながら、男は大声で童謡を歌った。それを元に戻して再び回転させると、その歌が聞こえてきた。周りの人々は息をのみ、歓声をあげた。蓄音機が生まれた瞬間だ。男の名はもちろん発明王エジソンだ▲1877(明治10)年のきょう12月6日のこと。この日を日本オーディオ協会は「音の日」に制定している。この発明は大変な評判を呼び、一目見ようと研究所に押しかける人のために特別列車が出るほどの騒ぎになった▲当時、エジソンは30歳。成功の理由を「耳が悪かったから発明できた」と答えている。ピアノに抱きつくようにして音楽を楽しみ、音が振動だと体に刻んでいたから、地震計のように音も記録、再生できるはずだと考えた。いわば難聴だったからこそ、誰も試みなかった音の再生に挑戦し、成し遂げた▲エジソンはまた注意欠陥多動性障害ADHD)だったといわれる。特定の対象に注意が向くと、他のことを考えられなくなる。逆に見れば、それは目標に向けて自らの行動を徹底する力にもなる。3カ月で小学校から離れた彼は、幸いにも母親の理解によって支えられた▲そのようなADHD学習障害(LD)などの「発達障害」は、文部科学省の調査で全国の小中学生の6.3%に可能性があるという。その早期発見と地域で支援するための「発達障害者支援法」が先の国会で成立した(来年4月施行)▲多くの人が程度の差はあれ、さまざまな障害をもっている。どのような子にも未知の才能を信じ、しっかりと伸ばす社会でありたい。エジソンが、障害を特長に転化させた「音の日」は、困難を抱えた子供たちの声に耳を傾ける日でもある。(毎日新聞 2004年12月6日 0時05分)