つくる会」の教科書、選定へ…栃木・大田原市
 栃木県大田原市の市立中学全7校(生徒計約1660人)で来春から使う歴史教科書について、大田原市教科書採択協議会の調査員会は、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した扶桑社発行の教科書が望ましいとする報告をまとめた。
 中学歴史、市町村で初
 同採択協議会は12日開かれ、この報告を基に同社の教科書が選定される公算が大きい。市教委は13日に正式に採択を決める方針。つくる会によると、同社の歴史教科書は都立の養護学校中高一貫校愛媛県立の養護・ろう学校と中高一貫校、私立8校の計19校で使われているが、市区町村の全域にわたって使われるのは初めてとなる。同市教委は公民についても扶桑社の教科書を選びたい考えだ。
 今年は全国の公立中学校で来春から4年間使われる教科書の採択年。各都道府県では、3〜54に分けた地区ごとに採択協議会を設けて教科書を選定し、地区内の各教委は8月末までに正式決定する。採択協議会は、地区内の教育長や教育委員長、PTA代表らで構成しており、現場の教師らで作る調査員会が教科書の特徴を研究した報告を基に教科書を選ぶ。
 大田原市は、1市単独で採択協議会を作っており、調査員会は、8社ある中学歴史の教科書のうち2社のものを推薦し、そのうち扶桑社の方が望ましいとしている。同社の教科書については、同市教委内や学校で「日本文化に対する誇りと愛情をはぐくむよう配慮されている」などの声が多いという。
 新しい歴史教科書をつくる会
 1996年、西尾幹二・電気通信大名誉教授らの呼びかけで発足。当時の歴史教科書を「自虐史観に基づく」と批判し、「日本人としての自信と責任」が持てる教科書を目指した。メンバーが執筆した歴史教科書は2001年4月、137か所の修正を経て教科書検定に合格。今年4月には、改訂版が124か所修正され、合格した。第2次世界大戦での日本軍の行動が、アジアの植民地解放を促した側面や、東京裁判の正当性に懐疑的な見方があることなどを記している。(2005年7月12日 読売新聞)

 県内 扶桑社教科書に批判的な組織弱い
 職員組合事情
 扶桑社の教科書が、大田原市で採択された背景には、同社の教科書に批判的な日本教職員組合日教組)や全日本教職員組合(全教)の基盤が、県内では弱いことが挙げられそうだ。
 県教委によると、県内の公立小中学校教職員が組織する団体は、県教職員協議会(栃教協)、県教職員組合(栃教組)、全栃木教職員組合(全教栃木)の三つ。このうち、日教組傘下の栃教組と、全教傘下の全教栃木は、扶桑社の教科書に反対の立場だ。しかし、各団体によると、栃教組の組織率は1%余りで日教組全体の30%と比べて大幅に低く、全教栃木の組織率も1%弱と、全国の8%を下回っている。
 これに対し、「特定思想に偏らない教育の正常化」を掲げて1963年に結成された栃教協は98%の教職員が加入。教科書選定については、「調査員の報告書を反映した、採択協議会や市町村教委の決定を尊重する」としている。
 教育委員会非公開で開催
 午前9時から始まった教育委員会には、海外出張中の1人を除く4人の委員が出席した。会議の冒頭、小沼教育長が「非公開でお願いしたい」との提案し、他の委員も同意。
 すでに入室していた傍聴人10人と報道陣は退室を求められ、傍聴人が「なぜ非公開なのか」「こんなふざけた教育委員会はない」などと声を荒らげる場面もあった。
 非公開としたことについて、小沼教育長は委員会終了後の会見で、「静ひつな環境のもとで審議をして欲しいという県教委からの指導もあり、よそでも非公開が普通なので、それに準じた」と説明。会議の具体的な内容については、「約2週間後に議事録を公開する」とした。
 ■黒羽、湯津上も合併で使用へ
 大田原市は10月に黒羽町湯津上村編入合併するため、扶桑社の教科書は、両町村でも使われる。同市立中学校は7校で、生徒数は約1660人だが、両町村の5校を加えると、12校、計約2270人となる。
 黒羽、湯津上両町村の教育長は今回、大田原市の教科書採択協議会にオブザーバーとして参加。また、社会科以外だったが、8人の教諭が調査員を務めた。
 黒羽町の新江侃(つよし)教育長は「調査員の意見を尊重し、指導要領に沿った適切な教科書を採択した。調査員を出させてもらい、配慮してもらった」と評価したが、中学校1年の二男を持つ同町の主婦(43)は「内容が偏ってないか心配。もう少し黒羽町の意見も聞いてくれたら良かった」と話した。
 ■賛否のメール市教委に殺到
 大田原市役所や市教委には、13日も賛否双方の電話やファクス、電子メールが相次ぎ、教委学務課では同日正午ごろから午後5時ごろまで、同課にある15台のパソコンすべてでインターネットの閲覧や電子メールの受信ができなくなった。同課あてに大量の電子メールが送られ、システム障害が起きたらしいという。
 また、12日以降、同市役所や市教委に寄せられた電話や電子メールなどは約1500件に上ったが、システム障害中の受信数は把握できていないという。(2005年7月14日 読売新聞)

 大田原市が扶桑社の歴史教科書を採択(栃木)
 「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した扶桑社発行の歴史と公民の中学校教科書が13日、大田原市で採択された。各地から、反対や激励のメールや電話が殺到する中で、全国市町村に先駆けての採択。市教委は「あくまでも教育的観点で(選んだ)」と強調したが、委員会の会場は、採択に反対する市民が詰めかけ、一時は騒然とした雰囲気に包まれた。
 ◆記者会見
 小沼隆教育長と、小高一紘・教育委員長は、委員会終了後、同じ市勤労者総合福祉センターの会議室で記者会見に臨んだ。
 小沼教育長は、顔を紅潮させながら、「全国津々浦々からたくさんの激励をいただいております。心より感謝とお礼を申し上げます」と話し始め、「この教科書に採択により、自国の伝統を正しく学習し、日本という国に誇りと愛情を持った子供が育つものと確信しています」と力を込めた。
 報道陣から、中国や韓国の反発が予想されることなどについて質問があったが、小沼教育長は「(現場の)社会科教師が念入りに調査研究をしたうえで得た結論」「正しい国際関係の理解にも適切」などと説明。「読めば、偏向教科書でないことが分かってもらえると思う」と胸を張った。
 ◆反対派
 教育委員会の会場には、「県北部歴史教科書と教育を考える会」(槐六男代表)や県教職員組合(栃教組)、全栃木教職員組合(全教栃木)のメンバーら約40人が集まった。
 午前10時ごろ、委員会が終わって記者会見が始まると、「市民に直接説明しろ」と会見場に入ろうとする市民もいて、市教委職員と押し問答に。約20分後、会見を終えた小沼教育長が公用車に乗り込むと、今度は「反対です」などと書かれた紙を手にした市民が車を取り囲み、20分以上にわたって「車から降りて説明しろ」などと要求した。
 反対グループはその後、同センターで集会を開催。槐代表は、ほかの団体と連携して採択を白紙に戻すよう求める署名活動やデモ行進などを続けると訴えた。
 ◆賛成派
 「教科書を良くする栃木県民の会」(藤井清代表)は13日午後3時から、市内の結婚式場で集会を開き、会員ら約30人が集まった。
 竹内節理事は「全国に先駆けての採択は非常に喜ばしい」とあいさつ。「前回はとても苦い経験をした。この4年間、多くの会員らが県民への普及、説明に努めてきただけに、採択は大変意義深い」と述べた。(2005年7月14日 読売新聞)

 扶桑社教科書 大田原市で選定
 大田原市内の中学校で来年度から、扶桑社の歴史と公民の教科書が使用されることが十二日、全国で初めて決まった。本県では四年前に下都賀採択地区で扶桑社の教科書採択が撤回されたいわゆる「下都賀事件」があったが、今回は大田原市単独での採択のため、十三日の市教育委員会で覆る可能性はない。「教科書を良くする栃木県民の会」の関係者らは、「今後、この流れが県内に広がってくれれば」とその“波及効果”に期待を寄せた。
 「これ以上うれしいことはない」。新しい歴史教科書をつくる会のメンバーが執筆した教科書の採択を求め、県議会や市町村議会などへ請願や要望を続けてきた「県民の会」の松本公男事務局長(八五)は喜びもひとしおの様子。採択は「あくまで教育委員会の専権事項」とした上で、「この流れが県全体に広がることを期待したい」と話した。つくる会の竹内節県支部長(六八)は「微妙な時期にあり、あまり話せない」としながらも、「喜ばしいこと。これから選定を行う他の採択地区への波及効果が見込める」。また、扶桑社の教科書について、関係者の一人は「日本人としての誇りを持たせる教育をするのにふさわしい教科書」と評価した。
 一方、福田富一知事は「教科書(採択)はあくまで協議会の中で議論して決めること」と述べるにとどまった。
 大田原市役所 相次ぐ激励、嫌がらせも
 大田原市役所にはこの日朝から、激励や嫌がらせの電話、電子メールが相次いだ。中には脅迫するような悪質なものもあったが、市関係者は「量的には激励の方がはるかに多く、安心した」と話している。
 市関係者によると、電話、メールは全国から寄せられた。「確固たる信念に基づいて採択してほしい」「日本の将来のために圧力に屈しないでほしい」「教育正常化の先駆けとなることを強く祈る」など順調な決定を求める声も多かった。
 一方、男の声で、「(扶桑社の教科書採択を)やめないと、市内の子供を次々に殺す」との脅迫電話もあった。このほか、「採択したら市内には引っ越さない」などのメールや、インターネット上で同市への抗議を呼びかける動きもあるという。(産経新聞2005.07.13)

 扶桑社の歴史・公民教科書 数都県で採択の動き 現在使用の私立8校も継続方針
 新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社の中学歴史・公民教科書が十二日、市区町村立中としては初めて栃木県大田原市で採択されたことで、関係者は「全国各地に有望な地区があり、第一号が出て教育委員らは勇気付けられるのではないか」と波及に期待している。また、現在同社の歴史教科書を使用している私立中八校すべてが継続して採択する方針であることも同日分かった。(教科書問題取材班)
                  ◆◇◆
 扶桑社教科書が参入して初の採択となった平成十三年は、妨害活動などによって私立九校(歴史・公民六校、歴史のみ一校、公民のみ二校)や東京都立と愛媛県立の養護学校などが採択したにとどまっていた。
 しかし、その後の新設校のうち、私立中一校に加え、東京都教委と愛媛県教委が重点校と位置付ける中高一貫校計四校が採択し、公立一般中での使用に道を開いていた。
 市区町村立中での初めての採択について、つくる会は、「市教委が発表するまでコメントできない」としているが、関係者は「抗議を恐れている採択関係者の背中を押すことになり、全国での採択に流れができる」とみている。
 関係者によると、数都県で採択が有望な地区があるという。東京都が来春開校する中高一貫三校も可能性が高いとされる。私立では、歴史教科書を現在使用している国学院栃木中(栃木県)▽常総学院中(茨城県)▽麗澤中(千葉県)▽麗澤瑞浪中(岐阜県)▽津田学園中(三重県)▽皇学館中(同)▽甲子園学院中(兵庫県)▽岡山理科大付属中(岡山県)−のすべてが今回も採択する意向をつくる会側に伝えている。
 各校は「これまでの教育実践で学習指導要領に最も忠実な教科書だと裏付けられた。改訂版は現行版より読みやすく教材として洗練されている」と評価しているという。(産経新聞7月13日)

 栃木:市民ら撤回求め騒然 大田原市教委の扶桑社教科書採択
 「子どもを戦場に送るんですか」「説明責任を果たしてください」−。大田原市教育委員会が扶桑社発行の歴史と公民の教科書を採択した十三日、会場に詰めかけた五十人以上の市民らが猛抗議し、騒然となった。地元の市民団体をはじめ県教職員組合や民団など各団体が採択の撤回を求めた声明を次々と発表。記者会見した小沼隆教育長は採択理由を「あくまで教育的観点」と説明した。 (大杉 はるか)
 ■採 択
 教育委員会はこの日午前九時から市勤労者福祉センターであった。小高一紘教育委員長が開会を告げたのに続き、教育長が「教科書採択の案件なので非公開でお願いします」と発言、傍聴者に退席を求めた。
 委員会は一時間足らずで終了、教育長が報道陣を集め、歴史と公民の教科書について扶桑社発行の教科書を採択したことを公表。「この教科書の採択によって自国の伝統や歴史を正しく学習し、日本という国に誇りと愛情をもった子どもが育つことを確信している。読めば騒がれているような偏向教科書でないことがお分かりいただける」と述べた。委員会を非公開とした理由は「県教委から採択は静かな環境で十分に審議してほしいとの指導もあり、非公開が普通だと思った」と説明。抗議の声が出ている点については「いろいろな考え方の人がいるので、それはそれとして受け止めたいと考えている」と話した。会見は二十分で打ち切られた。
 ■猛 抗 議
 教育長は裏口から車で会場を出ようとしたが、市民らが取り囲み「なぜ間接的に(採択結果を)聞かなければいけないのか。説明責任を果たしてほしい」などと押し問答になった。
 同市の市民団体「県北部歴史教科書と教育を考える会」の代表で、元社会科教師の槐(さいかち)六男さん(65)は「信じられない結果になった。これを市民に知らせていく必要がある」と述べ、反対署名を集めることを決めた。障害児学級の教師経験がある女性(61)は「歴史学に値しない教科書に私たちの税金が使われるのは許せない」と声を震わせた。中学の社会科教師(43)は「科学的、歴史的なものの見方を子どもたちに教えなくてはならない。教員の力が問われることになる」と話した。千葉から会場にかけつけた「子どもと教科書全国ネット21」常任委員の渡辺起造さんは「“つくる会”が勝手に日本の歴史を変えてしまっている。この採択が全国に別の意味で励ましを与えてしまう」と述べた。
 ■採択協議会
 この日の採択は、前日に行われた教科書を選ぶ教科書採択協議会の選定答申を受けたもの。協議会は四年前の前回まで、那須郡や現・那須塩原市と合同だったが、今年四月に離脱し、市単独で組織している。委員は、小高一紘教育委員長、教育長のほか自治会長、校長会長、PTA関係者ら七人で構成され、五月上旬に市教委が委嘱。協議会は同十八日、各教科につき数人の教師を調査員に任命。調査員は市内の中学校から希望を聞き、十種類近くある教科書の特徴と推薦意見を盛りこんだ調査研究資料を作成。七月十二日の第二回採択協議会で、歴史と公民については調査対象とした七種類の教科書から扶桑社を含む二種類を推薦した。協議会委員はこれを受け、全会一致で扶桑社に絞り込んだ。
 大田原市は十月、黒羽町湯津上村編入合併する。両町村は那須採択協議会に入っており、すでに別の教科書を採択しているが、実際に使用するのは同市が採択した教科書になる。(東京新聞7月14日)

 大田原市扶桑社教科書採択決定 市教委も「全員賛成」
 「この採択で自国の伝統、歴史を正しく学習し、日本という国に誇りと愛情を持つ子供が育つと確信する」−。十三日、全国の市区町村立中学校で初めて扶桑社の歴史、公民教科書を採択した大田原市教育委員会の小沼隆教育長は、記者会見でこう言って胸を張った。会見要旨は次の通り。
 −−採択した理由は。
 「扶桑社の教科書はバランスがよく、日本の歴史全体の流れと各時代の特色が理解しやすい。日本文化に対する誇りと愛情をはぐくむほか、先人の努力の様子が記述され、正しい国際関係の理解にも適切だ」
 −−反対を唱えた委員はいたか。
 「全員賛成だ。昨日(十二日)の協議会も全会一致だった」
 −−抗議行動があるが。
 「色々な考え方の人がいる。それはそれとして受け止めたい」
 −−(扶桑社の)特にどの点を評価したのか。
 「時代を特徴づける写真・資料が大きく掲載され、年表や人物のコラムなどからも時代の流れ、特色が理解しやすい。随所に地図・資料が入り、文化史も丁寧に記述しており、他教科との関連も図られている」
 −−全国初だが、心配は。
 「まったくない。高校入試にも学習指導要領にのっとった出題がされる以上、影響はない」
 −−現場の教師の反発は。
 「調査員の先生たちも反対があることはよく認識していた。特に念入りに研究した上で、扶桑社の教科書を選定したことを重く受け止めるべきだ」
 −−中国・韓国の反発については。
 「あることは重々承知しているが、あくまで教育的配慮から選定した」
               ◇
 ■県民の会「大変意義深い日だ」
 大田原市教委の扶桑社教科書選定を受け、「教科書を良くする栃木県民の会」(藤井清会長)はこの日、同市内で緊急集会を開き、「市教委が十分な調査研究の上、採択されたことに敬意を表する」との声明を読み上げた。また、反対派からの圧力が予想される市教委を励まし支えていくことで合意した。
 会合には関係者約三十人が出席。「ごく普通の市民が納得できる教科書として、扶桑社教科書導入を訴えてきた。きょうは大変意義深い日だ」(竹内節理事)などの声が挙がった。終了後、小沼隆教育長と千保一夫市長あてに声明文を提出。十四日以降は両氏へ激励のメールを送るという。
 一方、決定に反対する「県北部歴史教科書と教育を考える会」などは今後、署名活動やデモ行進を行い、市教委に対し、説明と採択のやり直しを求める方針。(産経新聞2005.07.14)

 つくる会」と反対派が相次いで会見
 栃木県大田原市教育委員会が、扶桑社が発行する教科書を来年度から市内の公立中学校で使用する事を採択したことを受け、教科書の執筆に関わった「新しい歴史教科書をつくる会」と、反対する市民グループが13日午後、相次いで会見を開きました。
 会見で、「つくる会」の八木秀次会長は声明を読み上げ、市町村区レベルの公立校で採択された意義を強調しました。また、こうした動きが全国に広まっているとして、「今回は採択率10%以上を目指す」と話しました。
 一方、今回の採択に反対する日教組日本教職員組合は、「侵略・植民地政策を肯定し、戦争責任を否定した記述には各方面から批判の声があがっている」「教育委員会の採択が、非公開という不透明な状況下で行われたのは極めて問題」などとする書記長名の談話を発表しました。
 また、市民グループ子どもと教科書全国ネット21」は、「教科書を政治の道具に利用している」と今回の採択を批判。「ただちに採択を撤回し、やり直しを強く要求する」との声明を出しました。(TBS13日20:57)

 つくる会」教科書、栃木県大田原市が採択 市町村で初
 栃木県大田原市教育委員会は13日、来年度から市立中学校で使われる歴史、公民教科書について、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆し、扶桑社が発行する教科書を全会一致で採択した。
 つくる会によると、同社の教科書は現在、私立校や都立の中高一貫校愛媛県養護学校などで使われているが、市町村レベルで同社の教科書が採択されるのは全国で初めて。
 市内の7校と、今年10月に大田原市編入合併される黒羽町(4校)、湯津上村(1校)で来年4月から同社の教科書が使われることになる。
 委員会終了後、市教委の小沼隆教育長は記者会見を開き、採択の理由について「自国の伝統、歴史を正しく学習して日本という国に愛着をもった子どもが育つと思う」と説明した。
 教育委員会が開かれた会場の前では、採択に反対する住民ら約30人が抗議集会を開いた。会見後に会場を出ようとした教育長の公用車を取り囲み、「考え直してください」と訴えた。
 同県内では、01年の前回採択の際、小山市など2市8町でつくる採択地区で、扶桑社教科書の選定を決めたが、各市町教委がこれを不採択とし、決定が覆された。(朝日新聞2005年07月13日10時50分)

 教科書問題:「つくる会」教科書不採択求め、杉並区の保護者ら提訴/東京
 杉並区立中学校で歴史・公民の教科書として「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を採択しないよう求めて、保護者ら10人が1日、区を相手に東京地裁へ提訴した。
 訴えによると、杉並区の山田宏区長は「つくる会」教科書の採択に強い意向を持ち、8月上旬に教科書採択の区教委が開かれる見込みという。保護者らは「戦争を肯定したり改憲を示唆する内容の教科書は、憲法の平和理念や公平な教育を定めた教育基本法に反しており、生徒の思想形成に回復困難な損害をもたらす」と主張している。【井崎憲】
 ◇山田区長の話
 訴状を見ていないのでコメントできない。7月2日朝刊(毎日新聞) - 7月2日16時31分更新

 教科書問題:中学採択の配布資料「『つくる会』に有利」−−市民団体が抗議文/広島
 ◇「調査項目『つくる会』に有利」
 今夏の中学校教科書採択で、市民や保護者らでつくる「教育基本法改悪反対!ヒロシマ実行委員会」は11日、県教委が各採択地区に配布した選定資料について、「『新しい歴史教科書をつくる会』メンバーが執筆した歴史・公民教科書が有利になるように調査項目を設定している」などとする抗議文を県教委に提出した。
 選定資料は県教委の諮問機関である「県教科用図書選定審議会」の答申を受け、県教委が策定。6月下旬、採択権のある各市町教委に参考資料として配布した。
 抗議文は、選定資料の歴史的分野で、「つくる会」教科書で記述の多い歴史的人物の索引人名数を数値化して示す一方、同教科書で記述の少ない「原爆投下」に関しては詳細に比較していない、と批判。公民的分野でも「国旗・国家」や「主権、領土等」など同教科書に記述の多いものを調査項目にしているとして問題視し、同資料の撤回を求めた。【牧野宏美】
7月12日朝刊(毎日新聞) - 7月12日17時20分更新